ある朝、女子大生の裕子は、ラジカセの留守録をセットした。
夕刻、FMで放送される音楽番組を録っておこうと思ったのだ。

その夜、アパートに帰った裕子は、カセットテープを巻き戻し、
再生ボタンを押した。ところが肝心の番組が録れていない。
原因はすぐに解った。ファンクションスイッチを「外部録音」に
したまま、タイマーをセットしていたのだ。お蔭でラジカセは、
誰もいない部屋の音をずっと録音し続けていたのである。

がっかりしてスイッチを切ろうとした時、裕子はスピーカーから
僅かに聞こえる声に気づいた。「何かしら?」
不思議に思いながら聞いてみると、どうやら声は二つ。
どちらも小声ではあるが、幼い少女のようだ。

「もっときれいにすればいいのにね」
「本当よね、きれいにすればいいのにね」
裕子は最初、それが何のことか解らなかった。
会話はなおも続いた。

「このままじゃ嫌よね」
「もっときれいにすればいいのにね」
「本当よね」
裕子は自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。

ゆっくりと、背後を振り返る。
部屋の隅の大きな洋服箪笥の上に、数年前友達から貰った
二体の少女人形がある。長い間そのままにしていた二体は
埃にまみれ、煤けた顔で、裕子を見つめるように座っていたのだ。