投稿者:レイズ


怖い話好きなら、どこかで聞いたことがあると思います。
ただ今から書くことが元祖もしくは本流に近いものだと私は信じています。
なぜかと言うと、ネットで散見するより遥か前からこの話を知っていたから。
もっといえば、体験者は私の先輩。
福岡出身の彼が、大学時代に地元で体験した話なんです。


以降は体験者をA。
自称“見える”友人をB。
二人の共通の先輩をC、としてすすめます。

C先輩からAに電話がかかってきました。
「俺さ、超いい物件で一人暮らしはじめたんだ。荷解き手伝うってことで遊びに来いよ」
「なんすかいい物件って」
「クソボロいけどさ、超安いの。しかも一軒家なんだよね」
「一 軒 家 !?」
なにも一軒家にこだわりはなかったそうですが、学生時分に安い物件かつ一軒家とは。借りた本人よりも、なぜかAが一番興奮していたそうです。
「んでさ、俺はそういうの分かんないけど、雰囲気だけはマジヤバイから。面白そうだからB連れてきてよ」
なにが面白いのかはさておき、“見える”というBをつれ、先輩の家に遊びに行くことになりました。

外観は、ち○まる子ちゃんの家って言うと分かりやすいですかね。
平屋で、トタンの壁、三角の屋根。見た目はそんな感じだったそう。
「おすおす、上がって~」とC先輩。
「マジで一軒家っすね~」
敷居をまたいで靴を脱ぐA。
「飯とかは出すからさ、掃除とかしてもらいながら…」
と玄関で話していると、Bは敷居すらまたいでいない。
それどころか、玄関の手前3メートルほどのところで立ち止まり、何もない空間を見つめながら首をかしげている。
正確には玄関のちょっと上あたりを、ぼーっと見ていたそう。
なるほど、さっそく「この家、何かいますよアピールか」と。
「あー。Bさ、今はそういうのいいからww あがれよ」とA・C。
Bは怪訝そうにしながらも敷居をまだぎました。

家の間取りはこれまた珍しい。
玄関を入ると、正面へ廊下が一直線に伸び、突き当りは壁。
廊下の右側は四部屋が並び、左側はガラス窓。
学校の廊下みたいっていうと分かりやすいでしょうか。

部屋は手前から和室、土間(井戸完備)、和室(Cの寝室)、和室。
(トイレは玄関の横)。
順々に家主のCが案内をしてくれたのですが、Bはその間もやっぱり上の空。
ところどころ何もない空間を見つめては、怪訝そうな顔をしたり、「うーん……うん…うん」と頷いたり。
やはりAもCも「今はそういうのいいからww」と取り合わなかったそう。
なんでって、“出そう”な家にBを呼んだのはあくまでエンタメみたいな意味。
荷解きや掃除に本腰を入れるぞという時に、「そういうのいらないから」。
というのもなんとなく分かりますよね。
Bだってもともと騒いでいたわけではありませんが、心なしか落ち着き、Cの寝室(三部屋め)を中心に荷解きや掃除を進めていったそう。
一番奥(四部屋め)は、陽が当たらないからか薄暗く、そしてカビ臭く。霊感なしでも気味が悪いと感じるレベル。
くわえて家主のCも使わないという理由で掃除は放置。
夜までかかって、その他の部屋の大体のことが終わりました。


スーパーの惣菜が主ですが、食事とお酒を振る舞ってもらったそうで、先輩の部屋でワイワイガヤガヤ。
そしてあるときCが切り出しました。
「Bさ、昼間この家に入るのをためらうというか、意味ありげな空気出してたけど、ああいうのってどんくらい本気なの?」
「いやぁ……。俺もよくわかんないんですよ」とB。
Aが割って入ります。
「え、なんか見えてたわけじゃないのw」
「いや本当にわかんないんだよ」
Cが茶地をいれます。
「いつもそうやって謎の雰囲気を出して人を怖がらせるんかい?w」

Bはムッとして天井を仰ぎました。
「じゃあ言いますけどね、」
昔の家って、天井が木の板で、マス目のように区切られてますよね。
彼は迷いなく天井の角隅を指差したそうです。

「あそこ、開きますよ」

昼間の掃除では雑巾でアチコチさらうものの、さすがに天井までは拭かない。
Cも越してきたばかり。誰も天井のことなど知るわけがない。
でもBは「天井のあそこ開きますよ」と。

酔っていたのも手伝って、じゃあ開けてみようぜ、と相成りました。
Cが脚立を持ってきて懐中電灯を片手に指定された天井を、手で押してみました。
するとポコっと天板が外れたんです。
A・Cは大爆笑。
「本当だ、マジに外れたww」
念のため他の天板も押してみますが外れない。
まさにBが指定したその板だけが外れたんです。

Cは脚立をもう数段のぼり、懐中電灯で屋根裏の様子をうかがいます。
A・Bからすると、Cは天井に上半身を突っ込んだ状態ね。
「先輩。なんかありました~?」
「もしもーしw」
などと声をかけていると、Cの体がビクッ!!!と跳ねて。
半ば転げ落ちるように脚立をおりてきたそうです。
「ヤバwwwwwヤバイヤバイ、ちょ見てみマジで見てみ」
Bは強く拒否。
Aが脚立を登らされます。

当たり前ですが屋根裏は真っ暗。
懐中電灯を手渡しされ、上半身を屋根裏に突っ込み様子を見てみる。
家の構造から言ってそこは屋根の部分ですから三角の空間が広がっているわけです。
なんの変哲もなくて当たり前。

でも。
よく見てみると天井裏のアチコチに黒いペットボトル大?のモノが置かれている。
光を当てる。目を凝らす。
まだまだ凝らす。光を当てる。

それは日本人形でした。
天井裏のいたるところにあったそうです。
最寄りの人形、その向こうの人形、反対側にある人形…。
一応全ての人形を見てみたのですが、
向いている方向は違うものの、ある規則性があったそうです。

ぜんぶ斜め下を向いている。

あるものは玄関を見下ろし、あるものは廊下を見渡し。
あるものは土間を、あるものはこの部屋を。

そしてAは気付きます。

「(Bは家に入る前から、こいつらと目が合っていたってことか……)」

半端にドンッと脅かされるより何かの事実に気づくほうが怖いものです。
Aはゆっくりと脚立をおりました。

B「なんか“いた”でしょ?」

Aは「うん」とだけ答えたそうです。

まあ、相手(?)は日本人形。
変なからくりでもなければ襲われるものでもなし。
構図的にはこの家を守っているとも言える。
絶妙な納得と静寂を経て、A・Cは再び交互に天井裏へ上半身を入れると、
「うわー…」だの「やべーw」だの。しばらく騒いだそうです。

ここまで書いておきながら、話にオチはありません。
ただちょっとした続きがあります。
再び天井を覗いていると、家の一番奥に位置する場所に白い箱が置いてあったそうです。
白にしてはマダラというかブチというか。
これまた目を凝らすと、それは御札がまんべんなくビッチリと貼られた箱であったと。
そしてその箱の真下は四部屋目、あのカビ臭い部屋でした。

ここまでの事があったのに、家主の【C】には正直どうでもよかったらしく、その後もその家に住み続けたそうです。
【B】は他の怖い話よろしく警告を発したか、いいえ。住職の知り合いに除霊を頼んだか、いいえ。普通に帰ったそうですし、Aは余程のことがない限りその家には上がらなかったと。

……ということで。
由縁などは明らかにされませんでしたが、福岡に実在したという格安物件のお話だそうです。