投稿者:影丸くん


一年前、会社員の私は出張で2週間、他県にある支社に行った時の話。

土曜日の晩、支社の先輩達に誘われて居酒屋~スナック~ラーメン屋をハシゴした帰りの事。

時間は深夜1時過ぎ。ラーメン屋でタクシーを二台呼んでもらい、外で待ちました。最初の一台が到着して先輩達が乗り合わせて自宅へと去って行きました。

出張中の私は支社の寮の一室で寝泊まりをしていて、先輩達とは逆方向。

しばらくすると2台目のタクシーが到着…かと思ったら、後部座席(ドライバーの真後ろ)に女性が乗っているのが見えた。どうやら別のタクシーが、たまたまココで客を降ろすらしい。

『なんだよ紛らわしいな…』と呟いたと同時に後部のドアが開いたその瞬間、私は絶句した。

後部座席に居るはずの女性が居ない。タクシーが私の所に横付けして来た時、フロントガラス越しに乗車している姿が見えたはずなのに。

年老いたドライバーが窓を開けて『電話頂いた方ですよね?』と尋ねてきた。私は『え?あ、はい…』と呟いた。

怪訝そうな顔で尋ねるドライバーの『乗らないんですか?』の問いに、『いや…お金が無い事に気付いて…呼んで置いてスミマセン』と、申し訳無いが咄嗟に嘘を付いた。

私は、走り去るタクシーの社名、ナンバーをスマホに控え、別のタクシーを探して帰路に着いた。

翌々日、一緒に飲んだ先輩達にあの夜の出来事を話してみた。すると先輩達は驚きもせず平然と『それ、心霊タクシーだ』と。

社名とナンバーも知っていて、スマホの控えと一致した。

先輩達の説明に寄るとあのタクシー、この界隈のオカルト好きの間で話題となり拡散。今では噂を知っている地元の人間は絶対に利用しないとか。幸いココは観光地という事もあって観光客の利用者が多く、商売に支障は無いらしい。

その女性の霊は、おそらく2年前に60歳手前で病死したドライバーの奥さんの霊だろうと言われている。いつも笑顔で優しい女性だったそうだ。おしどり夫婦だったから亡くなった後も旦那のそばを離れたくないんだろうと。少しいい話にも聞こえたが…。

しかし…

先輩達には話せないままになってしまったんだが、あの夜私が見た霊はお世辞にも優しそうな女性には見えなかった。そして何より、ガラス越しに見えたその女の霊は恐ろしい形相で年老いたドライバーを睨みつけていた。