投稿者: 山神 凛


 〇〇駅から来たという若い女性が、溶けかかったアイスを片手に、汗だくになりながら落し物センターに訪れた。

落し物を見つけたと言って、新米の職員に御守りを差し出した。桃の花が刺繍されたピンクの可愛い御守りだった。

〇〇駅のホームに一箇所だけある、5つ並んでる腰掛けで見つけたという。御守りは、向かって左から2番目の腰掛けにあったという。

新米の職員はその御守りを預かった。そこに上司が来てこう言った。

「それ、絶対に処分するなよ」

その翌日の夜に、落し物センターに紺色の長袖のセーラー服と赤いマフラーを身につけた、三つ編みの女子学生が訪れ、新米の職員に言った。

「私の御守りはどこでしょうか?〇〇駅のホームで失くしました」

新米の職員は、預かったピンクの御守りを女子学生に差し出した。その拍子に、切れかかった御守りの角から、砂のようなものが少しだけカウンターにこぼれたのに気がついた。しかし、女子学生は気がつかず、にこりと微笑みお礼をして帰った。職員は、その砂を手拭いで拭いた。

次の日、今度は若いサラリーマンが、左手で扇子を扇ぎながら落し物センターにやってきた。彼が右手に持っていたのは、おととい女性が届けてくれたピンクの御守りだった。

サラリーマンはこう言った。

「〇〇駅のホームの向かって左から2番目のイスで見つけました。中に砂が入った紙包みが入ってたのですが、破けてるみたいです。ここに持って来た時には砂が全部こぼれていました。すみません」

翌日の夜、持ち主の女子学生は現れなかった。

上司がやってきて、新米の職員に言った。

「それ、もう中身ないから捨てていいよ」