投稿者: 美海


親友の父親が亡くなって一周忌になったのを機にマンションを売ることになった。彼女は母親と二人暮らし。老いていく母親との生活を考えると駅や病院、役所から遠い今の住まいを手放して正解だと思った。

引越は業者のお陰でスムースに片付き、その日から駅に隣接した築20年程の割と綺麗なマンションの10階3LDKに入った。手近なレストランで夕飯、順番にシャワーを済ませ、母親は仏壇を置いた奥の和室に入り、私と親友が玄関左脇の洋間、荷解きしてない荷物が玄関右脇の洋間に収まった。

コンビニで買い込んだ菓子類や缶チューハイを開ける元気もなく、布団を敷いてへたり込む。
親友は割と元気で缶チューハイを片手に
「呑まないの?」
「ギブ…寝さしてくれー」

朝まで起きない勢いで寝たんだが、玄関をノックする音で目覚めた。
眠くて這いずって布団から出て、そのまま四つん這いでドアをあけて廊下ってか玄関の上がり口にでた。中学生くらいの男の子が何故だか玄関の中にいた。
「こんばんは。夜遅くに`すみません。」
「誰?なに?」
正直、私は寝ぼけていたと思う。彼は頭をちょこんと下げた。
「隣です。挨拶できて良かった」
「あ、私は引越の手伝いにきたんで、この家の人はもう、休んでいて~」と親友が寝ている方を振り返り、顔を再び戻したら少年がいない。慌ててリビング、和室など家中探したがいない。

戸締まりを確認したが何処も施錠されている。
なんとも困ったが、仕方なく布団に戻ろうとしたら親友が起き上がって不審げに私を見ていた。
「美海なにしてんの?トイレか?」
「言いにくいんだけど、変なことがあったよ。」
正直に全部話した。
「兄さんだよ」
親友は二つ上の兄が生後間もなく亡くなったからそれが新しい家にきたのだと考えたらしい。
しかし、少年は隣人らしい事を話していた。親友と私は、引越で疲れて見た夢で寝ぼけたという事にして取りあえず寝た。

10日くらいたった頃、親友からメールが来た。

内容はこんなだ。

右隣の家には、精神を病んだ年配の女が独居している。昼‘夜の区別なく泣いたり笑ったり歌ったりしている。
1週間に2回、旦那さんらしき男性が数分立ち寄る。
親友も休みの日に「⚪⚪いちー」と泣き叫ぶ声と子守歌を聴いた。おまけに、何か変な音が家の中でバチバチ鳴る。だから、近々もう一度泊まりに来てくれ。気味が悪い。なんとかしてくれ。

泊まりにいきたいが、仕事が立て込んでいた。詫びメールをいれたらすぐにメールがきた。
「切羽詰まってヤバイから、明日、美海の家にいくね。」

翌日の夕刻、会社の近くで待ち合わせして親友を家に泊めた。
私の家で夕飯を食べながら呑んだ。
詳しく話を聴こうとしたら
「バチン!ベキン!バキバキ!」
マンション部屋のあちこちから異音が響いた。
親友と私は同時に
「ラップ音」
ハモってる場合じゃないぞ。
「美海、中学生君はアンタに用があるんじゃない?」
親友は真っ青になり震えながらもなかなか冷静だ。鳴り止まぬ音の中、毎日の「ラップ音」らしき怪異や、隣からの奇声について話を聴いた。

親友は翌朝帰っていったが、ラップ音は鳴り止まない。
私は独居だが、家の中に誰かの気配というか足音が絶え間ない。
さて、どうしたものか?

週末、再び親友の家にいくことにした。因みに私の家でバチバチいってる間、親友の家はバチバチだけは静かになっていた。
隣人の奇声などは変わらずだ。
覚悟を決めてお泊まり支度を始めた。バチバチと今夜も盛大に鳴り続けている。