投稿者: まりな


私が新人看護師だった頃の話です。実体験そのままなので、オチもなく怖くはないと思います。病院あるあるとして読んで頂けたら幸いです。

当時勤めていた病院では、朝に申し送りが終わると、環境整備と言って看護師みんなでお掃除に回っていました。端から順番に病室を回って、最後に回るのは319号室。この部屋は詰め所から1番近く、重症者が入れられることの多い部屋です。亡くなる方は、急死でない限りだいたいこの部屋で最後を迎えておられました(新人だった当時はそんなことも知りませんでしたが)。
 その日も重症の方(Aさんとします)がその部屋におられました。みんなで掃除に入ると、Aさんがしきりに部屋の入り口あたりを指差して何かを訴えていますが、呼吸器がついていて会話はできません(呼吸器と言うと意識のない患者がつけているイメージだと思いますが、呼吸補助だけ行うようなタイプもあります)。意図が汲み取れないので紙に書いてもらうと、よぼよぼの字で
「よ     ば    れ      て」
と、息も絶え絶えにゆっくり書かれました。遅いので書き終わるのを待ちきれず、ベテラン先輩が「誰に呼ばれてるの?」と聞くと、
「か       と      」
文字を見ていた他の先輩数名が小さく悲鳴をあげたり、やばいやばいと言いながら次々部屋を退出して行きます。
「か       と      う       さ        ん」
書き終わる頃には私とベテラン先輩以外の看護師は居なくなっていました。
ベテラン先輩が悟ったような様子で「あーそっか。加藤さんはどこにいるの?」と聞くと
Aさんはゆっくり私の左後ろあたりを指差しました。もちろん誰もいません。
 幻覚症状だとは思いますがさすがに気味が悪くなり、さっさと掃除を終わらせて退室。詰め所でベテラン先輩にさっきのは何だったのか尋ねると「よくあるの。三途の川はね、3人揃わないと向こう側へ渡らせてくれないんだって。先月亡くなったのが加藤さん(仮名)、その次にもう1人あの部屋で亡くなってて、最後にAさんでようやく揃うんだね。Aさんが入院してきたのは加藤さんが死亡退院した後の話だから、生きてるときの加藤さんと面識は無いはずだし、そう言うことだろうね」と。加藤さんとは3月にあの部屋で亡くなられた方の名前だったので、4月入職の私だけ知らなかったのです。
その日の申し送りで、「Aさんが夜間、呼吸器を外して歩こうとしたのかベッド下に転落していた。『行かないと』と言っていた。せん妄症状が出ているので注意」と報告を受けたことを思い出しました。記憶が曖昧ですが、この事があった翌日頃にお亡くなりになったと思います。ちなみにある看護師がご家族に尋ねたところ、Aさんの知り合いに加藤さんという人は居ないとのことでした。

その後、看護師として働いていくうちに「3人セット説」は本当であると感じるようになりました。特にお盆は、ほぼ必ずです。連れて行かれてしまうんですね。でも私たちは慣れてくるので怖がる訳ではなく、仕事の予測がつきやすいなーと思うだけです。