今までの人生で一番身近で起こった怖いこと。 

大学の時、サークルにT先輩とM美先輩というカップルがいた。 
M美先輩は小柄で結構可愛い顔をしてた。 
でも顔を隠すように髪を伸ばして、服装も地味で、いかにも情緒不安定ってかんじの言動を取る人だった。
メンヘル気味で通院してたらしい。 
T先輩は常にM美先輩を気遣ってていい人だった。 

俺はそのサークルには、そのうちあまり顔を出さなくなったんだけど、
T先輩もM美先輩も、いつのまにかやめちゃったらしい。 
それもどうやら、大学自体やめてしまったみたいだと聞いた。 

ここからは完全な聞き書きなんだけど、
M美先輩はどんどん不安定になって行って、T先輩もさすがに面倒見きれないと周囲にこぼすようになったようだ。 
その後、冬のある夜に、T先輩のアパートで喧嘩になって、
「あまりにもウザいから叩き出した。もう別れる」と言っていたそう。 
その後、M美先輩の姿を見た人はいない。 

T先輩は徐々に様子がおかしくなっていった。 
「口の中に髪の毛が入っている。気持ち悪い」と言って、やたらに唾を吐きまくった。 
「飯が食えない。髪の毛が絡んで噛めない」と言って見る間に痩せた。 

友達を家に上げなくなった。
一度終電逃して無理に押しかけた人がいたが、T先輩はずっとそわそわして、話しかけても上の空だったらしい。 
前に訪ねた時にあった、テレビ、パソコン、姿見が無くなっていた。
洗面所の鏡がガムテープをべたべた貼って、見られないようにしてあった。 
そしてしばらくして、T先輩はアパートを引き払って、どこかに行ってしまった。 
実家に帰ったんじゃないかとも言われてたが、定かじゃない。 
メンヘル移されたんだろうか気の毒に、と思ってたんだけど。

その後、別の先輩に聞いた話。 
彼がT先輩と話しながらジュースを飲んでいた時、
T先輩が不愉快そうに、口から長い髪を2、3本引っ張り出して捨てたという。
ふたりとも短髪なのに、なんだそれ、気持ち悪いなーと思ったらしい。 
「ジュースに入ってたの?」と聞いたら、すごい勢いで睨まれたって。 

全部聞き書きで不確かだけど、実際によく知ってた人がふたりいなくなったので、
大学時代の俺にはとてつもなくリアルで恐ろしかった話。