小学校の時、担任の先生から聞いた話。 
簡潔に言えば、いわゆる『狐憑き』体験記なんだけど。 

その先生(以後K先生)が大学生の頃の夏休み。 
暇を持て余しているK先生(男)と、その友人O(男)と友人A(女)と3人で、 
「K県K市のとある稲荷神社に胆だめしに行こうぜ!」って事になったらしい。 

で、夜遅く、3人で神社内をぐるりと回ったけど、何も起こらない。 
だが、その内に紅一点のAが、「もう帰ろうよ」って言い出したと。 
男2人も、怖くは無かったがAの不安げな様子が気になって、帰る事にしたそうだ。 

しかし、出口の鳥居に向かうにつれ、Aの顔色がどんどん悪くなっていく。 
「大丈夫か?」と心配しながら、Aを支えて歩く男ふたり。 
出口の鳥居をくぐろうとした瞬間、Aはとうとうしゃがみこんでしまった。 
で、下向いて「寒い寒い」って言いながら、自分の肩をさすってる。 
冒頭で言った通り、夏休み。当然ながら寒いわけがない。なんか変だ。 
起こそうとしても立ち上がらないし、K先生とOは困り果ててしまったそうだ。 
その内にAが、「寒い寒い寒い寒い寒い寒い」ってすごい早口で言いながら、 
ノースリーブの肩をさすっている手が、どんどんスピード上げていく。 
しかも爪立ててボリボリボリボリ掻き毟ってる状態だから、二の腕から血が出てきた。

あまりにその様子が怪しいから、さすがにK先生とOも怖くなって、
無理やり半ば引きずるようにしてAを家まで送り、その日は解散したんだと。 

それから数日、連絡も取らず、(携帯とかも普及してなかったし。てか無かった?) 
その事も殆ど忘れてマターリ夏休みしていたK先生の所に、Oから連絡があった。 
『Aがおかしくなったらしい』
( ゚Д゚)ハァ?確かにあの時の様子はおかしかったけど、マジで? 

ちょいと責任を感じた男ふたりは、Aの家へとお見舞いに行ったそうだ。 
Aには会えず、Aの母親が憔悴した感じで出てきて、様子を教えてくれた。 
なんか、Aはひたすら「キィィーーー」みたいな奇声を発しながら、暴れまくってるらしい。 
部屋から出せず、食べ物を持っていっても壁に投げつけちゃうし、 
それだけじゃなく、女の子なのに糞尿垂れ流しして、それを壁になすりつけてるそうだ。 
(ここに関しては、後から聞いたらしいんだけど。そりゃそうか…) 

K先生とOはメチャクチャ怖くなって、でも胆だめしに連れてった事は言えなかったみたい。 
酷い話だと思うけど、よく考えりゃある意味責任問題になりそうだしね。 
まぁどうしようもなくて、その日は帰った。

悩みは募りながら、数日経ったある日、K先生の所にOから電話。Aの母親からOに連絡があったらしい。 
今度は何だと思って聞いてみると、
『Aが部屋から抜け出して行方不明』
ちょっとどころじゃなくマズイ。慌てて2人も探しに出たそうだ。 

まぁ色々あって、結局見つけたのはK先生。 
Aは最寄りの駅の駅員さんに、駅員の事務所に保護されてたんだけど。 
駅員さんが真っ青な顔して、「なんなんですかこの人?」みたいになってるから、 
あーやっぱり暴れたのか、と思って話を聞こうとすると、
駅員さんは怯えた感じで、1枚の紙をK先生に渡したそうだ。 
それには、狐が上半身を上げて、手で招いてるみたいなポーズの絵が描いてあった。 
白い紙に、グルグルって感じで塗りつぶした、影みたいな真っ黒い狐。明らかに狐。 
(お稲荷さんみたいなポーズって言えばわかるかな?)

驚愕しながら「これどうしたんですか?」って聞くと、
駅員さんが言うには、彼女の身元が分からなかったから、質問したが全然返事もしない。 
じゃあ文字なら書けるかと思って、ボールペンと紙を渡したそうだ。 
そしたら、椅子に座ったままいきなりガクンッ!!って頭を垂直に真上に向けて、
(もう完全に真上。90度。駅員さんも仰天したらしい) 
ボールペンを鉛筆持ちじゃなくて、幼児がスプーン握るみたいに5本の指で握って、 
天井睨みつけながら、紙の上をボールペンでぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる……。 
当然、グチャグチャな絵が出来るだろうと思って、駅員さんが呆然としてたら、出来たのはこの狐の絵だったと。 

K先生も駅員さんも完全にびびっちゃって、
まあ警察とか色々あった後にAは自宅に帰り、可哀相だけどまた監禁状態にするしかなかったそう。 
K先生もOも、軽々しくAの話ができる雰囲気もすっかり無くなったって。 

で、また数日後なんだが。 
真夜中、K先生の1人暮らししてる家に電話があった。 
こんな時間に電話してくるのはOくらいだって思って電話を取ると、声はなんとA。 
『もしもし、K?』
奇声とかじゃなくて、普通の声で話しかけてくる。 
「A、治ったのか!!良かったなー!!」
大喜びするK先生。 
Aは嬉しそうに同意しながら言葉を続けたそうだ。 
『うん。私の所からはもう出ていくって。次は、Kのところにいくよ』
ガチャ。 

反論も質問も受け付ける暇一切無く、電話は切られたらしい。
もうK先生めっちゃめちゃビビりまくって、
泣きそうになりながら、隣町で1人暮らししてる弟の所にバイクで転がり込んで、
震えながら一晩過ごしたそうだ。 

普通の話なら、ここで狐はK先生の所に行くんだろうけど、結局その後はなーんも起こらず。 
Aもいつの間にか普通の子に戻ってて、( ゚д゚)ポカーンだったそうだ。 
でも、ぶっちゃけ怖くて、もうAとは遊んだり出来なかったらしい。 
「いまだに年賀状だけは送ってるけど」とか言ってた。