投稿者: さとう

 
何故か最近まで忘れていた出来事をひょんなことから思い出したので書かせていただきます。


 1年程前のお話です。




 当時私は釣りが趣味でして、港の街灯の光に群がる豆鯵をターゲットにしておりました。

 もともと穴場の上に、深夜2時ということもあり私以外の釣り人は居ないようでした。

 暫くするとどこかから
「〜♪〜♪〜♪」
と鼻歌のようなものが聴こえてきました。

何度も同じフレーズを歌い続けています。


3文字の歌?と言うのは分かりましたが何を言っているのか、はっきり分かりません。
声は男性の様でした。

 私の釣りのポイントから少し林を抜けた辺りにシーバスなどの大物狙いのポイントがあります。
耳をすますとどうやらそちらの方向から聞こえる様でした。


大物の方に釣り人がいるんだろう。でも車は無かったな。
などと考えていた時でした。

 林の中からいきなりガサッと音を立てて大型犬が出てきたのです。

 暗くてシルエットしか見えませんが、手足が細く長いのでドーベルマンの様な犬だと思いました。

 いきなりの事でしたので、心臓がバクバクしましたが

 釣り人が連れてきた犬か?リードはあるんだろうな?野犬だとしたらやばいな。
などと考えていました。

 するとまた先ほどの歌が聞こえました。
今度ははっきり聞こえます。

「す〜♪み〜♪れ〜♪」
「す〜♪み〜♪れ〜♪」


 私は自分の目と耳を疑いました。

歌は犬から聞こえます。

いえ、現実に言うと犬だと思ったそれはブリッジ状態の人間でした。


ガリガリに痩せた裸の男がブリッジ状態のまま歌いながら私の方向へ進んで来ています。


 近くなるにつれ、男の表情もはっきり見えてきました。

 満面の笑み。 肌は苔が生えたような緑色。
手足が異様に長い。
楽しそうに歌いながらゆっくり近づいて来ます。

人間では無い。
確信しました。

 逃げようと思えば逃げられる速度ではありましたが
 恥ずかしながらその時私は腰を抜かしてしまい動けずにいました。
 金縛りのような、動いてはいけないような気もした気がします。

 全身から汗が吹き出し息が出来ないほど苦しかったのを覚えています。

 視線を外すことも出来ず目が合いっぱなし。


残り2メートル程の距離まで近づいた時

「お前。すみれをどこにやったの?」
と聞かれました。



 そんなの知りません!分かりません!神様助けて!

 と、言いたいけど声がでません。
心のなかで叫びました。
すると

「そうなの?知らないの?すみれを知らないの?ごめんね。これあげるね。」

 と、私のクーラーボックス一杯にどこから出したのかワカメを詰め込んできました。



私の記憶はここまで。
おそらく恐怖のあまり失神したのでしょう。


ベタですが気がついたら病院のベッドにいました。
 釣りの最中に倒れたらしいです。
この時先ほどの出来事をすっかり忘れていました。
 幼少の頃からのてんかん持ちですので原因はそれだと思い込んでいました。


 釣りの道具を回収に行った父から

「クーラーボックスの中のワカメはなんだ?」と聞かれた時も

???
でした。


 先日味噌汁のワカメを見た時にハッと思い出したので投稿してみました。

彼(?)は一体何者だったのでしょうか。
その時は恐怖でしかありませんでしたが、今思えばそんなに悪い感じはしない。
満面の笑みだったけど悲しそうだった。