投稿者:小野唯


ちょっと前の話になるんだけど落ちついてきたから話したいと思う。

2012.11.2
午後5時半

私はいつものように1歳の娘を実家に預け、ペーパードライバーの旦那を職場まで送っていたんだ。

その時、旦那がため息交じりにこう言った
「久しぶりに手料理が食べたいな~」
って。

恥ずかしながらこの時私は全然料理をしていなくて食事はもっぱらファーストフードかコンビニだった(もちろん娘のご飯は作っていたけどね)。

さすがにそろそろ作ってやらなきゃいかんな…
って事で旦那を送った後スーパーに寄ることにした。

ハンバーグが食べたいと言っていたので運転をしながら
アレ買って~コレ買って~
と考えていた。

スーパーは家の近くにあるんだけどそこに行くまでに1個だけやたらと待ち時間が長い信号がある。
本当はダメなんだけど赤になりそうな時は手前の銀行の駐車場をいつも突っ切ってショートカットしていた。

この日も案の定信号が赤に変わりそうだったので
失礼しまーす
なんて心の中で思いながら駐車場を通り抜けすることにした。

そしたら駐車場の丁度真ん中くらいに着いた時、突然バシャッ!!っと赤いフラッシュが光ったんだ。
目が潰れそうなくらい明るいフラッシュ。

多分オービスで捕まった時みたいな光(捕まったことないからよく分からないけど)。

咄嗟に
ヤバイ!ナンバー控えられた!
通り抜けする人を捕まえようとしてるんだ!
って思って急いでスーパーに向かった
(今思えば監視カメラはあるだろうけど銀行にそんな装置ないんだけどね。でもその時は本当に焦った)。

そしてスーパーに着いて愕然とした。

スーパー…無い…

駐車場はちゃんとあるんだけど建物だけスッポリ無い。
建物だった所は白っぽい砂利になっていた。

建物が無いのに駐車場にはいつものように沢山の車が停められていた(多分人は乗っていなかったと思う)。

私が料理をサボっている間に潰れたのか!?
イヤイヤ、この前この道を通った時はあったぞ!?
と、かなりパニックになってしまった。

赤いフラッシュに突然消えたスーパー。
ちょっとした恐怖を覚え、とりあえずオカンのいる実家に向かうことにした
(銀行付近は通りたくなかったから結構遠回りで)。

実家に着くまでに思ったんだけどなんとなく店の配置がおかしかったり見たことが無い建物や道路があった。
紫色の看板や屋根が多いようにも感じた。

なんとなく気分が悪くなり軽い頭痛と吐き気で泣きそうになりながらなんとか実家までついたんだけど実家もおかしかった。
平屋の一戸建てなのに2階がある。
いつもの平屋に2階が乗っかってる感じで。

よく覚えてないけど、もう本当にパニックで家の前で花壇の手入れをしていたオカンに
あの2階何!?
スーパーどこ行った!?
なんかすっげぇ気持ち悪いんだけど!!!
みたいな感じで色々聞きまくった。

私の様子を見てオカンもパニックになってて
「落ちついて!とりあえず家にあがりなさい!顔色悪いよ!」
みたいな事を言いながら私を家の中に入れた。

家の中の様子は対して変わりなかったけど玄関を入ってすぐに階段が出来ていた。

手すりや柱が一切無い、ただの階段。

とりあえずリビングの椅子に座り出された麦茶を飲んだんだけど手は汗でベタベタ
心臓はバクバクいっていた。

オカンに
「あんたちょっとおかしいよ」
と言われ自分でも頭がおかしくなったんだと思った。

そこで私はハッ!っと気付いて
叫んだ。

○○(娘)はっ!!!?
って。

オカンは何故か隣に住んでいる親子の子供だと思ったらしく

「???隣の子は○○ちゃんだよ?○○ちゃんのこと?」
と聞いてきた。

色々やりとりをしたんだけど結論から言うと娘はいなかった。

実家に居なかったというよりこの世にいなかった。

私は○○(娘)を産んでいなかった。らしい

私は何故か警察に行かなきゃ!!と思って

警察!!○○(娘)!!
警察!

とか叫びながら玄関に向かったんだけどオカンに止められその場に崩れ落ちた。

放心状態で動けなかったけどオカンの声は聞こえた。

どうやら私の旦那と電話で話しているようで今から病院に連れて行くからとか
これそうだったらすぐに来てほしいとか
そんなような会話をしていた。

そのあとオカンの車にほぼ無理矢理乗せられて病院に向かった。

オカンが何か話しかけていたけど分からなかった。

ただ娘に会いたい
娘に会いたい
だけ考えていて前が見えない位号泣していたと思う。

病院って大体白とか茶色の建物だと思うんだけど、着いた病院は赤かった。

入りたくなかったし気持ち悪かったけどきっと私の頭がおかしくなったんだなと半分諦めて入った。

中は普通に清潔感のある病院。
でもあの消毒薬のような独特の匂いは無く、代わりにレストランのような食べ物や油の匂いがした。

時計を見ていなかったから分からないけど多分1時間くらいは待合室で待たされた。
受付や説明は全てオカンがやっていたから私はずっとソファーに座っていたと思う。

診察室に入ってからも娘と旦那の事ばかり気になって、先生の話は良く聞けなかった。
とくにMRIに入ったとか聴診器を当てられたとかは無い。

ただ、今日は時間外で担当がいないから明日改めて来る様に、と言われた。

オカンが受付で支払いをしていると旦那が来た。

旦那の姿を見たら急にホッとしてまた号泣してしまった。
○○(娘)がー!
○○がー!
って叫びながら。

でも旦那も娘のことを忘れていた。

通りかかった清掃のおばちゃん?みたいな人に車椅子を進められたけどオカンがもう帰るから大丈夫です。と断った。

外に出てから旦那とオカンが何か話していてオカンから
「今日はうちに泊まるか?」
と聞かれたけど私は自分のアパートに帰れば娘がいる気がして断った。

実家に着いた後は旦那の運転でアパートに帰った。

アパートの部屋には娘がいないどころか、娘の服もオモチャもアルバムも無かった。

娘が産まれる前の部屋に戻っていた。

その日から私は病院以外は部屋から出られない生活になってしまった。
病院も行きたくなかったけどオカンがしつこく迎えにくるから一応行った。

でも今思うと病院の駐車場までは記憶があるけど中に入った記憶は一切無い。

ご飯も少しは食べていたけど味がしなかった。
オカンがいつも料理を届けてくれたけど和食専門のオカンがイタリアンばかり作って来るのが気持ち悪かった。ゴメン

私はそのまま2013.5.7まで廃人の様に生きていた。
髪はボサボサに伸び、体はガリガリ
肌はボロボロだったと思う。

その日旦那が
「一緒に買い物に行こう。そろそろ外に出てみないか?」
と言ってきた。

こんなに汚らしい見た目の女を連れて一緒に歩いてくれるんだ。と感動した。

冒頭に書いた様に何故か町中紫色の物が多く、それが気持ち悪くて見たくなかったんだけど、私こんなんだからあまり遠出はしたくないと言い、とりあえず近くのスーパーに行こうってなった。

あの消えていたスーパーに。

何故かこの時私はスーパーが無くなっていた事を忘れていたんだけど、その時はちゃんとあった。

外観も中も普通のスーパー。

スーパーに入り、買い物カゴを取ろうとした時急に目眩がして倒れそうになった。

確かこのとき旦那のシャツの裾を掴んでいて咄嗟にギュッと握ったんだけどスカッと外れてしまって私は倒れた。


目眩が収まり気がつくと私はスーパーの日用品売り場に立っていて買い物カゴを持っていた。

反対の手には地域指定のゴミ袋。

カゴの中はハンバーグの材料だった。

しばらく訳が分からなくてその場に立っていたけどカゴをその場に置き去りにしてスーパーの公衆電話から実家に電話をかけた。

電話に出たのは娘だった。

まだ言葉が話せないんだけどなにらやムニャムニャ言っていた。
その後オカンが電話にでて
「孫が出ちゃってすみません、どちらさまですか~?」
と言われた。

公衆電話の前に座り込んで号泣した。
受話器からオカンの
もしもーし?もしもーし?
が聞こえる。

時計やカレンダーなんかみなくても分かった。
私は帰って来たんだって。

公衆電話の位置から自分の車が見えた。
受話器をそのままにして私は車に乗り込み実家に行った。

前の平屋だった。
階段も無かった。
何より飛び切りの笑顔で迎えに出てきた娘が嬉しかった。

力いっぱい抱きしめた。
潰れちゃうんじゃないかってくらい。
最初笑っていたけど苦しかったのか泣いてしまった。

オカンが怪訝そうな顔をしていたけど関係なく泣いた。

カレンダーを見たら
2012.11.2

時計は午後7時35分だった。


帰ってきました。
ありがとう。