投稿者:さるさ


もう10年以上経ったので体験した話をします。(大丈夫だよな?
 文章下手なんで、そこは許してください。

 その頃割と身入りがいいという事で警備員のバイトをしていました。

 2月1日。

 深夜というか、夕方から夜中の2時半までが自分の担当で、幹線道路(2車線対向)の光ファイバーを引くための現場で、完全片側通行でした。
 大きな交差点を2か所挟む、かなりの距離を工事していて、警備員は自分のほかに11人計12名が派遣されていたのです。何しろ道路はさほど広くない割に夜中であっても相当な交通量があったのです。特にトラックですね。


 朝の7時からあるミーティングの時に自分の交代でA田という60代のおっさんが2時ごろ入ると聞いていたのですが、実は顔を合わせたのは初めてで、随分と顔色の悪い、やせたおっさんでした。

 凍えた手でマイク付き小型通信機をA田に渡し、28分ぐらいに自分は抜けて、現場近くの駐車場に止めてある車に戻り、一息入れた後、発車しました。

 細い道から10Mほど進んで工事現場である幹線道路に出ます。
 そして15Mほど進んだところで、交代で入ったA田によって止められました。残念なことにこの工事中の道を進まないと家に帰れないからですが、ついでにおっさんの仕事ぶりも観察しようと、まじっと見つめていました。
 手の振り甘いな。
 立ち方が少しだらしないな。
 自分はきちんとしようなどと思いながら「やっぱ。ここ止めおく時間長いわ」とついぼやいたり。
 ところが。なんというか。
 A田の両肩が・・なんか違和感あるんです。
 思わず両手で握っているハンドルに顎を載せ、前かがみのままじっと前方に立つA田を見詰めていました。
「・・なんだろ?」
 確かに外は雪がちらほら舞っていて、吐く息も白いですが。
 湿った雪をどかすワイパーが邪魔に感じないほど多分見ていたと思います。
 A田の両肩に、雪とも違う何か、白いものが見えるんです。薄ぼんやりと。
 それが何か分からず、その日は「GOサイン」出たので、通り過ぎました。

 翌朝、朝のミーティングにA田もいたので、挨拶がてらいろいろ話をしました。
 なんでも東北から流れてきたとか。実は○○○に金借りて、逃げ回ってるとか。
 思わず、嘘やろ?!って感じで。ネタかもしれないなと思いながら聞いていました。


 その夜も無事A田が交代で来てくれて、自分は車に乗り込み、帰り道、またしっかりA田によって止められました。
「ついてないなぁ・・」
 本格的に雪が降り始め、この後から警備する連中のしんどさに苦笑を浮かべながら、やはり目の前に立つA田を見ていると。
 やはり両肩に白っぽい靄みたいなものが。
 いつもの癖でハンドルに顎を乗せ、眼をすぼめてみていると。
「・・・え?」
 じっと見ているとそれがだんだん形になっていくんですよ。
 真っ白い細い生足。爪には真っ赤なマニュキア。
 A田の両肩に足首までが、乗っているんです。
「・・・ええ?」
 ただでさえ寒いのに、全身にトリ肌が立ちました。

 翌日も。
 さらにまた次の日も。

 自分が休みのときは知りません。A田が休みの時も知らないです。
 ただ、自分とA田の時は必ずと言って、両肩に乗った真っ白な生足を見るんです。
 それも。
 日を追うごとに、足首だったのが、膝ぐらいまで・・少しずつ見えてくる範囲が広がって。

 本人に問いかけるのもはばかれたのですが、さすがに気味が悪く、言葉を選びながら何とか「昔、水商売の女とよくなって」とか「女にまで借金負わせた」とか「何も言わずに逃げ出した」とか、そんな話を聞き出せたんです。
 とにかく口が重いし。

 あの白い足が、その女性かどうかは知らないですが。


 ついに頭をまたぐように立って、屈伸するかのように伸ばした両腕がA田の頭を抱え込んでいる姿に、見えるようになっていました。
 軽く吹雪いた闇の中。
 全く揺れることのに黒い長い髪。真っ白な両手両足。特に印象に残ったのは足の指の真っ赤なマニュキア。

 初めて幽霊的なものを見たのですが。
 おかしなことに恐怖とか、あまり感じませんでした。
 気持ちが悪いとか、気味が悪いとか。嫌だなぁとか。その程度で。

 見え始めて16日目。(手帳に記録が残っているので・・)

 そしてその日。珍しく「お前とA田と時間交代して入ってくれや」と頼まれ、自分は2時ごろ現場に入れるように出掛けました。
 連日の雪。凍結した道路。視界を遮る吹雪。


 すると現場に入るだいぶ手前で車はとめられました。
 端に立ってた同僚に「なに?」と尋ねてみると「事故だ。・・・A田が」
 あわただしく無線でやり取りしているし、パトカーのサイレンやら救急車のサイレンやら、かなりうるさく。

 その時は現場が混乱していて「そっちの奥の駐車場使っていいから、そこにおいて、A田の穴埋めに行ってくれ」と頼まれ、雪の中を1キロほど歩いて現場に。
 かなり現場はわやくちゃで、多分顔色もなくしていたと思います。
 何しろいつも自分が立つ場所が赤黒く染まっていたし、鉄さびのような臭いが充満していて。
 歩道には大型トラックも止まっており、ひしゃげたカラコンやら散乱していました。

「警備員さん悪いけど、後2時間ほど現場保存するから、そこで待っててくれ」

 と言われ、やり場のない自分はただぼんやりと立ち竦んでいました。

 ただ。加害者と警察とのやり取りを小耳にはさんだ時、自分は心底恐怖しました。

「いきなりスリップ・・ハンドルが取られて」
「荷崩れもしてるから、積載量とか・・」
「甘かったかも・・・鉄板が滑り落ちて、それで・」
「・・首が・・」

 ・・・・ああ。あの赤いマニュキアの女がA田を刈ったんだな。

  その時はそう思ったのですが。

あの日自分が定時のほうで現場に立っていたら・・・。どうなっていたんだろうと今でも考えてしまいます。