投稿者:イチ


可愛らしい、小鳥の声で目が覚めると、そこはエミさんの家の寝室だった。

脇にはティーポットとカップが置いてあり、俺の頬にはクサい湿布が貼ってあった。

開いた窓から吹く気持ちのよい朝の風と、台所から聞こえる炊事の音に安心し、俺は二度寝に入った。

二度寝から覚めると、住民の皆さんがやって来て、もうてんやわんやだった。
泣いてお詫びされたり、やれお詫びに畑で採れた野菜を大量に持っていけだとか、ご馳走したいだとか、皆さん必死(笑)。
村長さんもやってきて、帰り道についていってご両親に謝罪する、どうとでもしてくれと食い下がったが、丁寧にお断りした。

帰りのバスが来るまでの少しの間、エミさんと話した。
あの獣の歯が人間のものだったのもあり、エミさんは大怪我はしなくて済んだ。

2人でぎこちない雰囲気で話していると、バスが来た。行きと同じような古ぼけたバスである。
じゃあこれで、とエミさんが言って、そそくさと背を向け歩き出した。エミさん、と呼び止めると、遠慮がちに振り返る。
俺がありがとう、と言うとびっくりして、寂しそうな、でも少し嬉しそうな顔をして笑った。


バスに乗り込むと客はおらず、車掌がダルそうにこっちを見た。
「家まで」
俺の言葉を聞いて車掌は軽くうなずくと、座るのを待たずにバスを発進させた。

行きと同じ真っ直ぐな道が延々と続く。道の両側の草木は夏の日差しを反射させ、風にそよいでいる。

俺は窓の外を見ながら、ただボーッとしていた。

何気なく皆さんのくれたお土産袋をみると、野菜がごろごろ、エミさんの梅酒も、ビンに梅ごとはいっている。それと、大量の湿布。

何だか可笑しくなり、笑いをこらえながら外をみると、懐かしい田舎の風景が遠くに見えた。

これから、宿題をやらなきゃな、地元の友達や兄貴に挨拶して、それから親には色々と手伝われるんだろうな、‥

それから、戻ったらまた、東京で頑張ってみるか。

もうバスは、地元の駅のところに停車するところだった。