投稿者: イチ


中学生の時の話です。
数年経つし、上京前の事だから忘れていましたが、当時のメモを発見したので脚色して投稿します。

俺の地元では毎年夏に、神社で祭りが開かれる。
大人達が一年かけて用意した露店が立ち並び、小さい神輿も飾られる。
寂れた町の一大イベントだった。

その年も同じ学校の、三人しかいない同学年のA子、B、Cと、一つ上のE美さんと祭りに行った。

杏飴や焼そば、イカ、とうもろこしなど食べまくり、ゴム射的や金魚すくいもやって満喫した。何より、当時友達以上になれるか、という微妙な関係だったE美さんと、祭りのおかげで良い雰囲気になり嬉しかった。

祭りも夜になると、大人達は飲み始め、俺達は神社の裏山を散策することにした。
俺は掬った金魚を家において後で合流することにした。

神社に戻ると家から持ってきた懐中電灯を点けて、神社の裏手に回ると裏山の細い道に入った。

少しすると、皆のケータイとかの明かりが見えた。
懐中電灯を振って合図をすると「あっD(俺のこと)!」と気付いて、皆がこっちを見た。
俺は皆に駆け寄った。
だが何か皆の様子がおかしかった。
固まって動けない感じで、こっちに困惑した顔を見せている。

俺「どうした?」
E美「歩いてたら、平たい石が落ちてたから、A子が何となく拾ったのよ」
B「いや、怪談話してて、かごめかごめの話してたら、突然A子がこんなの見つけてよ」
Bが見せてくれた石には一言
 もういるよ
と彫られていた。

皆は異様な空気を感じて固まっていたのだ。
その時、ふと顔を上げた俺は、皆の進行方向10mほど先に何かいるのに気付いた。
こちらを伺うかのように、じっと立ち尽くしている。
俺しかそいつのいる方向を見ていないので、皆はまだ気付いていない。
暗くてよく見えないが、変に首や手が長く、坊主頭で背が高く‥

俺「もう戻ろうぜ」
後ろを振り向きそうになったBの手から石をもぎ取って落とし、必死にBとE美の手を掴んでぐいぐい引っ張った。
あいつを見ると、こっちに近づいてきている。
たまらず小走りになると、皆は案外素直について来てくれた。

神社の広場に戻ると、人はまばらだった。露天の片付けは翌日で、大人達は集会所で朝まで飲み通すのだろう。

皆で置いてあるラムネを飲んだ。皆すっかり元気を無くしている。人心地つくとすぐBが引き返した訳を聞いてきた。
とりあえずBに電話すると言い、皆は解散した。

家に着くと親と兄貴は飲み会でいなかった。
すぐに電話がかかってきた。Bからだ。
親御さんがいるA子とE美さんを除いて、Cの家に3人で集まることになった。

C宅居間で、さっきの裏山の話をした。
すると、Bはそいつの存在に気付いていたという。俺と話していたとき後ろから嫌な雰囲気を感じていたらしい。

そのうちBがC宅に泊まりたいと言い出した。
一番体格が良くケンカが強いBが言うので逆にビビり、俺も泊めてもらうことにした。

Cの部屋に男3人はキツいので、居間に布団を引っ張り出して3人で雑魚寝した。よくお互いの家に泊まっていたので特に珍しくもなく、1時を回る頃には誰からともなく寝た。

3時を過ぎたくらいか、人が動く気配で目が覚めた。横の布団のCがおらず、廊下と隔てる障子が少し開いていてトイレに行ったようだった。
すると俺の耳に、何か小さな子供の声
が聞こえてきた。
小さいがよく通る声で歌っている。

すぐにかごめかごめだと分かった。
Bは熟睡している。
俺は布団の中で丸まっていたが、意外と怖くはなかった。可愛い声だし、特に金縛りなどにもならない。

しかし歌の最後の瞬間
「う゛じろ゛の゛し゛ょ゛う゛め゛ん゛だあ゛れ゛」
もの凄い野太い、男の声に豹変した。

勢いよく後ろを振り向くと、廊下を隔てた障子に、人影が映っていた。
影でCだと分かった。トイレから帰ってきたようだ。俺はホッとし、Cに話そうと思って待った。
Cは障子の向こう側に立って、いつまでも居間に入ってこない。

何かヤバい気がして、Bを揺さぶった。うーんとか言っているので耳をつねった。
「痛って!!」
その声に反応し、Cが障子の隙間から顔を覗かせた。
Cの姿をしたそいつは口角を上げて笑っている。
しかし目は笑っておらず、ドス黒く、人間には出来ないような悪意のこもった目が俺を凝視している。

半身を起こした状態で固まっている俺の腕が千切れるように引っ張られた。Bだ。そのまま半ば引きずられて廊下と反対側の窓まで行き、Bと二人で窓から転がり出た。

家の前の道路を挟んで、しばらく二人で開いた窓を睨んで突っ立っていた。暗い上、窓のカーテンで室内はよく見えないが、そいつが追ってくる気配はしない。

少しして「あれっ」
というCの頓狂な声がし、居間の明かりが点いた。

その後は3人で身を寄せ合って、まんじりともせず夜明けを待った。Cの親が帰ってきたのは、もう日が昇った朝だった。