かごめの怪は人に非ず
ただ怨霊の塊に候
詞を絶やすべからず
俺は巻物のメモを見ながら、C宅でリュックに色々と詰めていた。巻物は罪悪感から、すぐに御堂に返した。
リュックには、大量の塩、ペットボトルに詰めた塩水数本、御守り。
Bはお椀や水のペットボトルなど。
幸いC宅は共働きで、親御さんは夜にならないと帰ってこない。
俺は親にはいつもの仲間とキャンプをすると言ってある。
実は昨日から、一度服を取りに行ったきり家には帰っていない。
家にいると、情けないが、これからやろうとする事に怖じ気づいて、出てこれなくなると思ったからだ。
しかしそれは他の皆も同じだったようで、昨日は5人でC宅で寝た。
B「天気悪いなぁ‥降りそうだな」
俺「あっしまった」
俺は急いでビニール袋を探すと詰め込んだ。
C「カッパ2枚あるよ」
カッパはA子とE美が着ることになった。
夕方になり支度が終わり、C宅居間で皆が手持ちぶさたになった。テレビを見るでもなく、口数も少なく、どんよりとした空気が漂っている。
ブーッと俺のケータイのバイブが鳴り、出ると兄貴だった。
兄「おう、今どこだ」
俺「どこって‥、C宅で、これからキャンプだよ」
兄「神社でか?」
俺は言葉に詰まり、適当にごにょごにょ言って通話を切った。
B「お前の兄貴、すげーリーゼントだよなぁ!」
俺「ああ、今時ねーよな」
C「毎日、二時間かけてセットしてる厚さだよあれは」
皆笑って、少し場が和んだ。
日が沈む頃、5人はC宅を出発した。黙々と田舎道を歩く。
10分ほどで神社に着いた。
裏山に続く道に、懐中電灯を持って入っていく。
しばらく歩くと、目的地に着いた。平らな石は一昨日のままだ。誰も石には触れずに、
黙々と作業をする。
まず地面の落ち葉などを取り払い、十分な広さの場所をつくる。
お椀4つに盛り塩をし、三メートル四方くらいの正方形の四つ角に置く。雨のために一応ビニール袋を掛けておく。
正方形の中心辺りに、人が1人座れる小さい円を塩で書く。
ここに入るのはE美さんだ。A子でもいいが、途中で詞を止める危険があるのと、A子の方がE美さんより体力が確実にあるので、そうなった。
それから持ってきた懐中電灯で足元を明るくする。
その他は各自で思い思いのことをやった。
俺は御守りを首からぶら下げ、塩をかぶってみた。Bは軍手をしている。手に汗をかくからだろう。
用意が整うと、皆は正方形の中に入り、‥
沈黙してしまった。
A子はしきりに辺りを気にしている。BもCも後ろを何となく、チラチラ見ている。
「さぁ、始めましょ」
E美さんが耳栓をし、円の中に座り込んだ。
つられて皆が、E美さんを囲んで手を繋いだ。
真っ暗な森に、E美さんの淡々とした声が響く。
「かごめ かごめ かごのなかのとりは いついついでる」
「よあけのばんに つると かめが すべった」
「うしろの しょうめん だあれ」
「かごめ かごめ」‥
俺達は手を繋いで円の周りをゆっくり回る。
5分間くらい回り、目が闇に慣れた。
懐中電灯のあるこの場所以外は漆黒の闇だ。
雲が出ているので月の光も無い。
10分ほどすると、じっとりと汗をかいた。
E美さんは淀みなく文句を唱えている。
更に10分ほどして、だんだんダレてきた。
皆の顔を見回すと、A子とCは神妙な顔で歩いている。Bと目が合うと、なんとやつは変顔をしてきた。つい吹き出しそうになり、俺も仕返しをした。
2人で百面相をし、頬の筋肉が痛くなった頃、もうやめようとBに口パクをした。
Bは真顔で応えない。真顔が面白い奴で、彼も自覚しているので、その手には乗らないぞと思ったとき
「うしろの しょうめん」
「ダアァァァァレェェェ」
喉がヒュッとなった。
あの野太い声だ。
心臓の鼓動が激しくなる。俺の手を掴むA子とCの力が強くなる。
しかしE美さんの声は変わらず淡々としている。
耳栓を持ってきたE美さんは正解だな、と上の空で思い円の中心を見ると、E美さんは目をつむっている。その肩は小刻みに震えている。
「ダアアアァレレェェェエエエ」
だんだん声が大きくなり、やつが正方形のすぐ外にいるのを確信した。
正方形の中に入ってきたらどうしよう、目をつむることは出来ないのに顔を覗き込まれたらどうしよう、
やつがどの辺りにいるのか気になり、よせばいいのにチラッと正方形の外を見た。
白目の無い、悪意の塊のような目が俺達を見ていた。
白い着物の背の高い女で、やに首が長く、着物の袖を長く垂らしている。
そして少し開いた口から、まるで男のような重低音を発している。
皆の足取りが徐々に覚束なくなってきた。
汗が滝のように流れ、視界がぼやけてくる。
もうダメかな、という言葉がアタマにこだまする。
おふくろ、親父、兄貴、お別れも言ってない‥
「シャンシャン」
どこかで鈴が鳴った。
気のせいか、遠くで威勢のいい若い女性の声もする。
気のせいではない、だんだんその声が近づいてくる。近づくにつれ、女性の掛け声に合わせるように、リズムよく、男達の掛け声も聞こえてきた。
神輿だ。
シャンシャンと、いなせな、女性と男性の掛け声はどんどん大きくなり、ついにはE美さんや女の化け物の声をかき消してしまった。
頭の中で太鼓を叩かれ、叫ばれているような轟音に包まれ、5人は思わず頭を抑え、しゃがんだ。
腕の隙間から豪速球のごとく神輿が飛んでくるのが見えた。そして次の瞬間、
「ドガーーーーーーーン!!」
頭上で神輿が大破し、材木が降ってきた。
あの化け物のいたところには、凄い腐臭と溶けた肉片のようなものがあった。
と、遠くからライトの点滅と共に、人が数人猛ダッシュしてくるのが見えた。
先頭には、見間違うことのない、あのリーゼント‥
コメント
コメント一覧 (9)
題名すら目にしたくないのに三つ並んでるとか気持ちが悪いんだよ
ならA子が入るんじゃね?
あげて良い所なんですか?
度々上中下の話を目にしますが。
しかも読み応えもクソも無い話。落ち。
釣り?
怖い話系の小説を書きたくば
他で書いたりして下さい。
最近こう言うのが多くて
つまらんです。
イチくん!小説家にな○うで修行して出直そう!
だったら登場人物をABCにしないで、ちゃんと名前を付けた方がいいよ。
実話でアッサリ短い話なら構わないけど、人物描写をしている長めの物語なのに登場人物に親しみが持てないんじゃ読むのが苦になる。
投稿した人は正直、怪談書くの向いてないよ。
どうしても書きたいなら、怪談以外の話を書いたほうがいい。
それはそうと、「いついついでる」という歌詞のかごめかごめは初めて知ったな。
どこか特定の地域での伝承か何かだろうか。