投稿者:弟の友人

貴子は主婦だ。
湖の尻の苦酩羅という町で生まれ育った。そこも今ではダムの底だが。
朝早く起きて洗濯機をまわし、食事を作り、夫の顕示を送り出す。

唯一気に入らないのは姑だ。
それはともかく、息子の炎と冬に学校の支度をさせ、見送ると、貴子の天下だ。
姑にはご飯を作らない、何もしない、それでいて外ではよい嫁を演じる。
それが貴子のやり方だ。しかし、気づかれてしまった、隣のSさんに。
Sさんは、貴子の姑を助けようと策を練るが、貴子の罠にはまってしまう。

貴子は朝5時から騒音を出し続ける。洗濯機をまわし、大声で笑い、ドアの音を開け閉めし、
友人を呼び、道端で大声で騒ぐ。息子の炎と冬に友人を誘って道路遊びをさせ、
限りなく騒音を出し続ける。姑は周囲に誤り続けた。同居してもらってるから、堪忍してね、と。

隣のSさんは騒音でノイローゼを発症し、炎君に切りつけた。それが角で、まもなく転居を余儀なくされた。Sさんの祖母はまもなく転居のショックで認知症が進み、ひっそりと亡くなったそうだ。
いろんなうわさを跳ね除け。貴子は、自分が近所の天下となったことを喜んだ。それもつかの間・・・。

貴子の夫の顕示が、勤務先のガソリンスタンドをクビになり、自宅で首を吊った。
そのショックで、姑も喉をかき切り、自殺した。
息子の炎と冬は、翌日の電車に飛び込んだ。それから貴子は失踪した。

今、その家には、貴子の親族に縁もゆかりもない、まったく別の家族が何食わぬ顔して、住んでいる。近所にも溶け込んでいて、まるで何もなかったかのように日常が過ぎていく。
今でも2階のベランダには、洗濯物を干している透明な貴子が見えるという。

固有名詞を除き、フィクションではありません。