怖い話らぼ −怪談・都市伝説まとめ−

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大学時代、サークルの友人と二人で深夜のドライブをしていた。
思いつきで隣の市のラーメン屋に遠出して、その帰り道に、くねくねと蛇のようにうねる山道を通った。
昼間は何度か通ったことがあったが、夜になると、これが同じ道かと思うくらい無気味な雰囲気だった。
ハンドルを握っていたのは俺だったが、わりとビビリのほうなので、運転を代わってもらったほうが気が楽だった。
しかし友人の山根は、ラーメン屋で勝手に一杯ひっかけていたので、助手席で無責任な軽口を叩くばかりだった。
「ここの峠って色々変な話があるよな」
急に山根が、声をひそめて囁いてきた。
俺は聞いたことがなかったが、『何なに?どんな話?』なんて聞くとヤツのペースだと思ったので、
興味ない風を装って、「ああ」とそっけなく返した。
山根はなぜか俯いて、しばらく黙っていた。


二車線だが対向車は一台も通らない。
申し訳ていどの電灯が疎らに立っていた。
無言のまま車を走らせていると、急に大きな人影が前方に見えた気がして一瞬驚いたが、
道端に立っている地蔵だと気付いてホッとした。
このあたりに、なぜか異様に大きな地蔵があるのは覚えていた。
その時、黙っていた山根が口を開いた。
「なあ、怖い話してやろうか」
この野郎、大人しいと思ってたら怪談を考えてたな。
と思ったが、『ヤメロ』なんて言うのはシャクだったので、「おう、いいぞ」と言った。
山根は俯きながらしゃべり始めた。 


「俺の実家の庭にな、小人が埋まってるらしいんだよ。
 じいさんが言ってたんだけど。俺の家、古いじゃん。
 いつからあるのかわからない、へんな石が庭の隅にあってな。その下に埋まってるんだと。
 で、じいさんが言うには、その小人がウチの家を代々守ってくれている。
 その代わり、いつも怒っていらっしゃるので、
 毎日毎日水をやり、その石のまわりをきれいにしていなければならない。

 たしかに、じいさんやお祖母ちゃんが、毎日その石を拝んでいるけど、そんな話ってあるのかなあと思って、
 小学生の頃、病院で寝たきりだった曽祖父に、見舞いに行った時に聞いてみた。
 曽祖父も、ちゃんと小人が埋まってると教えてくれた。
 それも、ワシのじいさんから聞いたと言っていた。
 子供にとっては気が遠くなるほど昔だったから、こりゃあ本当に違いないと単純に信じた」

山根は淡々と話し続けた。
こんな所でする怪談にしては、ずいぶん変な話だった。
山根は言った。
「小人って、座敷わらしとかさ、家の守り神のイメージあるよな。
 でも、埋まってるってのが変だよな。
 俺、曽祖父に聞いてみたんだよ。なんで埋まってるのって」
そこまで聞いた時、急に前方に人影が見えて、思わずハンドルを逆に切ろうとした。
ライトに一瞬しか照らされなかったが、人影じゃなかったみたいだった。
地蔵だ。
そう思ったとき、背筋がゾクッとした。
一度通った道?
ありえなかった。
道は一本道だった。
「曽祖父はベットの上で両手を合わせて、目をつぶったまま囁いた。
 むかし、我が家の当主が、福をもたらす童を家に迎え、大層栄えたそうな。
 しかし、酒や女でもてなすも、童は帰ると言う。
 そこで当主は、刀で童の四肢を切り離し、それぞれ家のいずこかへ埋めてしまった」


俺は頭がくらくらしていた。
道がわからない。
木が両側から生い茂る景色は変わらないが、まだ峠から抜けないのはおかしいような気がする。
さっきの地蔵はなんだろう。二つあるなんて記憶に無い。
車線がくねくねと、ライトから避けるように身をよじっている。
山根は時々思い返すように、俯きながら喋りつづける。
「それ以来、俺の家は商家として栄えつづけたけど、早死にや流行り病で、家族が死ぬことも多かったらしい。
 曽祖父曰く、童は福をもたらすと同時に、我が家をこんこんと祟る神様なんだと。
 だからお怒りを鎮めるために、あの石は大事にしなければならん、と」 


よせ。
「おい、よせよ」
『帰れなくなるぞ』と言ったつもりだった。
しかし、同じ道をぐるぐる廻っているような気がするのと、山根のする話とどうも噛み合わなかった。
最初に言っていた『この峠の色々変な話』ってなんだろうと、ふと思った。
山根は続けようとした。
「これはウチに伝わる秘密の話でな、本来門外不出のはずなんだけど・・・」
「オイ、山根」
我慢できなくなって声を荒げてしまった。
山根は顔を上げない。悪ふざけをしてるようだったが、よく見ると肩が小刻みに震えているようだった。
「この話には変なところがあって、俺それを聞いてみたんだ。
 そしたら曽祖父が、おまじない一つを教えてくれた」
「山根。 なんなんだよ。 なんでそんな話するんだよ」
「だから・・・・」
「山根ェ!車の外が変なんだよ、気がつかないのか」
俺は必死になっていた。 

「だから・・・・こういう時にはこう言いなさいって。
 
 ホーイホーイ
 おまえのうではどこじゃいな 
 おまえのあしはどこじゃいな
 はしらささえてどっこいしょ
 えんをささえてどっこいしょ
 ホーイホーイ」
心臓に冷たい水が入った気がした。
全身に鳥肌が立ち、ビリビリくるほどだった。
ホーイホーイという残響が頭に響いた。
ホーイホーイ・・・・呟きながら、俺は無心にハンドルを握っていた。
見えない霧のようなものが、頭から去っていくような感じがした。

「頼む」

山根はそう言って両手を合わせたきり黙った。

そして気がつくと、見覚えのある広い道に出ていた。
市内に入りファミリーレストランに寄るまで、俺たちは無言だった。

山根はあの峠のあたりで、助手席のドアの下の隙間から、顔が覗いているのが見えたと言う。
軽口が急にとまったあたりなのだろう。
青白い顔がにゅうっと平べったく這い出て来て、ニタニタ笑い、これはやばいと感じたそうだ。
俺に話したというよりも、自分の足元の顔と睨み合いながら、あの話を聞かせていのだ。
彼の家の人間が危機に陥った時のおまじないなのだろう。
「家に帰ったら、小人にようくお礼言っとけよ」と、俺は冗談めかして言った。
「しかし、お前がそういうの信じてたなんて、意外な感じだな」と素直な感想を言うと、
山根は神妙な顔をして言った。
「俺、掘ったんだよ」


私が小6の頃に通ってた大きい塾には、男子トイレと女子トイレの他に、もうひとつトイレ(共同?)があった。 
そのトイレは教室から一番遠いところ(塾内の一番奥)にあり、そのせいか誰も使おうとしなかった。 
別に先生用のトイレという訳でも無いらしい。 
塾の先生曰く、「幽霊が出るからあのトイレは使うなよー」とのこと。 
まぁ確かに、そのトイレは誰も使用してないためか、なんだか薄暗く気味が悪かった。 

3月になり、皆が塾を卒業するその日。教室で生徒の1人がこう言った。 
「塾今日で終わりだし、授業終わったら、皆であのトイレに行ってみない?」 
おもしろそうと思った私達はその提案に乗り、
「ホントに幽霊出るんじゃねー?」「まさかー」等と、今日で卒業というテンションもあってか、妙に騒がしくしてしまった。 

教室に入ってきた先生が、そんな私達の様子を見て、
「おい、トイレに行こうって言い出したヤツ誰だ」
いつもフランクな感じの先生が、初めて私達に怒鳴った。 
一斉に静かになる教室。 
あ、そうだ。先生に近づくなと言われてるのに、肝試しなんて…と、少し申し訳ない気持ちでいると、
「いや違う。怒ってるんじゃないんだ。ただ誰が言いだしっぺなのか、ちょっと教えてくれw」 
と、今度はいつもの先生の口調で言った。
「・・・Aが言ったんじゃない?」 
「俺じゃねーよ。Bが言ったんだろ」
「え、俺は誰かが言ったのにノっただけだけど?あれ?」 

言いだしっぺが見つからない。 
でも確かに、生徒の誰かが提案したはず・・・なのに。 
次第にざわざわしだす教室。 
先生は「静かに」と、ひとつ溜息をついて、 
「やっぱり、誰が言い出したか分からないんだよな~。
 ま、そういう事だから、お前らあのトイレは使うなよ」 
それだけ言って、先生は授業を始めた。

これは俺が2年前の6月14日に体験した本当の話です。 
俺が前住んでたアパートでの出来事。

その日、俺はバイトで疲れて熟睡していた。 
「ガタガタッ」という異様な音で俺が目を覚ましたのは、午前3時半を少し過ぎた頃だった。 
新聞には早すぎるな・・・?と俺は思ったが、眠かったので無視してそのまま寝ようとしたが、 
いつまでたってもその音は鳴り止まない。
不審に思った俺は、上半身を起こして玄関の方を見た。 
まだ夜も明け始めていなかったので、部屋の中は真っ暗だった。 
まだ暗闇に慣れない目を細めながら、玄関の方をじっと見ると、新聞受けのあたりで何かが動いているのが見えた。 
背筋が寒くなるのを感じながら、俺は意を決してベッドから起き上がり、 
まだ「ガタガタッ」と音をたてている玄関の方に近づいた。 
玄関でその光景を見た俺は言葉を失った。

新聞受けからドアノブに青白い手が伸びていて、それがドアノブを執拗に上下させていたのだ。 
えっ!なんでこんなとこから手が出てるの?!と俺が絶句して立ちすくんでいると、 
その青白い手はグニャ~っとあり得ない方向に曲がり始め、
ドアノブの上の閉めてある鍵まで伸びてきて、その鍵を開けようと手首をグルグルさせ始めた。 
恐くなった俺は、立てかけてあったビニール傘の先で、その手を思いっきり何度も突き刺した。 
リアルな肉の感触が傘を伝わってくるのを感じながら、それでも思いっきりかさを突き刺していると、 
その手はふっと引っ込んで、それっきり静かになった。 
玄関の外には人の気配はなく、覗き穴を見ても人らしき影はない。 
うわー、出たー!と思いながら、その日は布団を被って震えながら眠りに付いた。 

夕方頃に目を覚ました俺が、バイトに行くため恐る恐る玄関に近付くと、玄関に無数に小さな丸い跡が付いていた。
それは昨日、俺が何度も青白い手に突き刺したはずの傘の先の跡だった。 
俺は確かに手だけに刺していたはずだった。一度も金属音はしなかったし、そんな感触もなかった。
(大家さんにはメチャクチャ怒られたけど・・・。おまけに弁償した)
だが、おかしなことはそれだけではなかった。 
外にはくっきりと、玄関の方を向いて立っていたであろう足跡が付いていた。それも泥まみれの! 
その日も前の日も雨なんか降っていなかったし、階段には足跡どころか泥さえも付いていなかった。

その出来事から2週間経って、俺は今のアパートに引っ越した。 
今でも、あの日のことを夢に見て跳ね起きることがある。 
あれは幽霊だったのだろうか?それともストーカー? 
あの時は本当に洒落にならんぐらい恐かった。

某宗派の現役の僧侶なんですが、 
先日ちょっとビックリした事に遭遇して自分でも混乱してるんです。 
需要があれば書こうかとも思ってますが・・・

先日、ちょっと不思議なご依頼を受けて某塙さんで有名な県に行きました。 

用件は、はじめて電話を頂いたかたから、 
最初は「お墓を新しくしたから骨壺(骨)を移動させたいので来てほしい」 
というものでした。 
俗に言う墓石の「魂抜き」から「魂入れ」をしてほしいということでしたが、 
当宗派ではそういうことは基本的にやってないので一旦お断りしました。

そうすると、相手様から  
「それでも何か似た様な事が出来ればそれで良いし、とにかく来てほしい」 
ということで何か必氏な感じも受けたので、 
「ご希望に添えない感じの内容になるやもしれません」 
などと宗派の教えを曲げる訳にはいかないので何度かお断りしたのですが、 
何度もお願いされて、しかも段々切迫して来たので心情的にも断り難くなって、 
その時は日程を調整して折り返し連絡差し上げます。という感じで返答しました。 
相手の声は中年と思える感じの男性で、ひとづてに私を知ったということでした。

翌日、朝のお勤めをしている時間(恐らく一般的には可也早朝)に 
そのかたから電話があり 
「日時は決まったか?とにかく急いで来て欲しい」的な事を何度も言われ 
正直、こんな時間に電話して来て非常識、しかも何か複雑な事が隠されて 
いるんじゃないか?何だか嫌な感じもするとも思いましたが、 
そのかた(以後Tさんとします)の声が半分泣き声みたいになって来たので 
前日の夜に確認した自分のスケジュールを複数日お伝えして、 
ご都合をお伺いしました。

するとやっぱり一番最短の日時(翌日の午前中)を指定されましたので、 
了解し、行く先の住所や経読に必要なや故人のお話をお聞きしようとすると 

「こちらが迎えに行くのでその時に詳しく話します」 

と言われ、ますます嫌な予感が強くなりました。 
しかし、受けてしまったものはもうお断り出来ませんし、 
何よりTさんはウチを知っていらっしゃるので反故にする様な事も 
出来ない状況(何かあればそれはそれで厄介で恐い)になっていました。


もともと気が小さい部類なので翌日に備えてご本尊にいつもより長く深く 
(こういうのも本当はいけないんですが)手を合わせて加えて、 
念の為、他宗派の友人からもらった独鈷杵も持参する事にしました。 
(仏教勉強会みたいなものがあり他宗派の事も少し勉強してますし友人もいます) 
そして翌日のお約束9時より早くにTさんは御迎えに来て下さいました。 
電話の印象とは随分違った、優しげな気の弱そうなかたに見えましたし、 
最初のご挨拶も「この度はご迷惑を掛けて申し訳ありません」と 
非常に丁寧で常識のあるものでした。

お迎えに来て頂いたのは電話を頂いたTさんとその奥様で 
いたって普通な雰囲気、自動車も一般的なものでした。 
県名だけは聞いていたので、何となくの時間を想定して 
家族に行き先とTさんの電話番号を告げ出発しました。 
「今日はお墓の移設の件でお呼び頂いたと思っていますが、ご家族様でしょうか?」 
とお聞きすると 
「いえ、私達には本当は関係ない人間なんです、ちょっと複雑なんで電話では 
話せませんでした。周りにも聞こえたら良くないし」 
とTさんの返答。その時、2つの考えが浮かびました。 

真っ先に浮かんだのは「やばいやつ」で、次に思ったのはいわゆる「水子」的な ものでした。

すると奥様が「お坊さんのことはDさんから聞いたんです」と仰いました。 
Dさんとは、昔、教育関連の仕事で一緒にお仕事をしたかたでした。 
そうなら早く言ってくれたら事前にDさんに色々聞けたのにと思いましたが、 
それよりも気になったのが「周りに聞こえたら良くないし」でした。 
「そうなんですかぁ」とか相槌を打ちながらその言葉が気になって気になって、 
既に少々ビビッていました。 
「周り」って何?会話の流れそのままで「家族」なら良いなぁとか思っていると、 
「Dさんがですね、お坊さんなら優しいので引き受けてくれるって言ったんでね」 
Tさんが話を始めました。


要約するとTさんご夫妻は某県に仕事と住宅購入で最近引っ越して来た。 
(だからDさんを知っている) 
新築したがそれまでに数年間ご夫婦で某県の色々な場所を下見して 
今の場所に決めた。山も海もあり水も空気も新鮮、食べ物も美味しい場所。 
ご夫婦には子供がいないので残りの人生をゆっくり過ごす場所が欲しかった。 
想定できる残りの年月で不自由しない仕事量と蓄えを計画もしてきた。 
電話ではお墓と言ったが、実はお墓の様な物である。 
勿論ここで「えええ?」と思い、思わず声が出そうでした。 
なので「お墓みたいなものとは、どういうものでしょうか?」とお聞きしました。
 
普通の会話の流れだったところに凄い違和感のあるものが出て来ちゃったんで 
私の声にも力が入ったのかもしれません。 
そのせいなのか、Tさんよりも奥様が先に 
「すいません、だますつもりとか、そんなんじゃなかったんです」 
と慌てる口調で仰いました。 
「いえそんな風には思ってませんから、大丈夫ですよ。 
というかみたいなものって碑とか石の積み上げてあるものとか、 
そういう感じのものでしょうか?」 
と車内の重くなってる感じの空気感をビンビン感じながら質問を続けました。 
Tさんは「私たちもお墓みたいなとしかいえない(表現できない)んです、すいません」 
と仰って「すいません」を何度か繰り返しました。 
わー、もうダメかも・・・加持祈祷禁止されてるけどもっと勉強しとけば良かった 
とか思っていると奥様が 
「でもお坊さんならみたらわかると思うし、大丈夫だと思うんです」 
と仰いましたが、私はこの時点で正直逃げ出したかったです。 
 
そういう訳で車中は重い空気のまま目的地に進んで行ったのですが、 
私が思っていた中心部付近でなく某県でも主要道から離れた 
なかなか行くことのない地域に向かっていました。 
車中の重い空気と違って晴れやかな外の風景は逆に怖さを煽る感じさえしました。 
その間、Tさんに何個か質問をしました。 

「私にお電話いただく前に地元の僧侶などには依頼されなかったのですか?」 
Tさん 
「勿論、しましたけど・・・」 
「しましたけど?」
 
Tさん 
「断られまして・・・隣の部落もだめで、隣の地域、隣の町まで探したけど駄目でした」 
「あの・・・どういう理由で断られたんでしょうか?」 
Tさん 
「色々です、お坊さんみたいに宗派が違うからというところもあれば、 
檀家じゃないからといわれたところもありました」 
Tさんの奥さん 
「だからお坊さんが引き受けて下さって本当に感謝してるんです」 
ん?何かはぐらかされてる?? 
「あの・・・そのお墓みたいなものを移設するのは移設するんでしょうか? 
それともそこで経読みするだけで良いんでしょうか?」 
Tさん 
「出来たら移して欲しいんです」 
うわ・・・こりゃ相当やばいなぁ 
現役の僧侶のくせに恥ずかしながらそんな事を考えてますますビビリました。
 
で、そうこうしながら(結局何か聞いてもはぐらかした様な返答ばかりでした) 
目的地近くに着きました。 

確かに山もあり海もあり晴れた日だったので自然がより綺麗に見えました。 
初めて来た場所でしたが私の認識では海鮮物(牡蠣や海苔)が美味しいと 
聞いた事がある地域でした。 
途中の道の駅の駐車場も観光バスや自動車が沢山で 
自分の嫌な予感みたいなものが間違いなんではないだろうかと思えたりもしました。 
Tさんのお宅はその地域の繁華街から山側に割りと入った場所にありました。 
最近の和洋折衷な綺麗なお宅でした。
 
私の地元でも似た様な雰囲気の地域はあるし特に変わった風ではないな 
と思った瞬間に気付きました。 

この町の繁華街からこの場所まで田舎ながら住宅が点在していたのに、 
ここに近付いてからは急に人家がなくなった。 
多分一番近い人家までは車でも数十分掛かる様な場所。 
でも森の奥とか山の奥とか出なく、周囲に田んぼや畑のある視界は開けた土地。 
土地も割りとなだらかだし、この辺にTさん宅以外に人家がないことが不自然に感じました。
 
お宅に入れて頂き、最初にリビングに通されました。 
「こちらにお仏壇があるなら最初に拝ませて頂きたいのですが」 
とお尋ねすると 
「我が家に仏壇はないんです」 
とのこと。奥様がお茶を運んで来て下さいました。 
お茶の味が分かったので、車中よりもだいぶ落ち着いたんだなと自覚しました。 
お茶を頂いている最中、Tさんがまたお話をして下さいました。 
「お坊さんが来てくださって本当に助かりました。 
家に着いただけというかお坊さんを連れて来られただけで随分安心しました」 
奥様も 
「お坊さんがここに来れただけでもすごく安心なんです」 
本当に最初とは違った笑顔ではないけど安堵の表情という感じ。 
「えーっと、お子様はいらっしゃらないということでしたが、こちらには 
お二人でお住まいなんですか?」 
Tさん、奥さま、ほぼ同時に 
「はい」 

ええええええええええええ?じゃあ、あの「周りに聞こえたら」って何なん? 
周りに人家も全くないし・・・やっぱ何か非常にマズくないか??? 
袖口の念珠を強く握りしめてご本尊を思い浮かべて怖い目にあいませんようにと 
何度も念じました。
 
「えーっと、では今回の詳しいお話をお聞きしてもよろしいですか?」 
Tさん 
「そうですねすいません、お坊さんはここがどういう土地かご存知ですか?」 
「いえ、牡蠣と海苔が名産地ということくらいしか・・・」 
Tさん 
「そうですね、海産物は有名ですね、あとこの地域では豚とか鶏とか家畜も地産品なんですよ」
「はぁ・・・」 
Tさん 
「ここには屠サツ場があるんです。しかもずいぶん昔からの」 
「はぁ・・・」 
Tさん 
「私達はまったく知らなかったんです」 
「はぁ・・・え?」 
Tさん 
「私達はそういうことは知らないで・・・知らされなくてここを買ったんです」 
・・・ん?家畜の供養とかそういう方向かな? 
その時はその程度に考え初めていてビビリ具合も少し引き始めていました。 
Tさん 
「お坊さんに嘘を言うつもりでなくて、お墓みたいなものでなくて、お墓と最初にお話したのは
最初からこのお墓みたいなものの話をすると他で全部断られたからなんです。すいません」 
奥様 
「本当にお坊さんに申し訳ないです、でもそう言うしかなかったんです」 
あぁ、近隣の僧侶から断られたって話にリンクして行ってんだな、と思いました。

で、そんなお話をお聞きしている時でした。 

だいたい昼の12時過ぎ真昼間、窓の外は天気で明るく綺麗な自然が見える中、 
話をしているリビングは、この家の入口⇒玄関⇒廊下⇒リビング⇒キッチン 
てな感じの場所にあり、あとは廊下の途中に2部屋、2階への階段も見えたので 
2階にも部屋があるようでした。そのリビングのフローリングの床が、 
突然、誰かが手のひらで思いっきり叩いたかの様に「バァン」と大きな音が鳴り 
足に振動が伝わりました。 
僧侶なのでいわゆるラップ音的なものや無人の場所で人の声的なもの 
薄っすら影的なものなどを見たり聞いたりしたことは正直ありましたが、 
こんなにハッキリした音(しかも大きい)と振動を感じたのは初めてだったので 
「うわっ」と声が出てしまいました。 
Tさんは、無言だったと思いますが、奥様は同じく「ぎゃっ」と悲鳴をあげました。 
で、間髪入れずにキッチンの奥にある窓がガタガタと音をして揺れました。 
私が座ったソファーの真正面だったのでハッキリ見えたのです。 
また、うわっと思っていると、その窓のガタガタが大きくなって最早、見間違えとかの 
レベルは大きく超えて誰かが外から思いっきり掴んで揺らしているかに思えました。 
こう書きながら今でもゾクっとして鳥肌が立ちます。

「なんですか?これ?」恥ずかしげもなく私は口にしました。 
Tさんは目を逸らしながら 
「これも1つなんです」 
「え?1つ」 
Tさん 
「お坊さん、すいません、これだけじゃないんです。どうか助けて下さい」 
「え?」 
奥様 
「本当に助けてほしいんです、お願いします」 
「え?」 
そのうち、窓のガタガタはおさまりました。 
もう完全にビビった状態でしたが、それよりもこんなハッキリした不思議な現象が 
起きるものなのか、そっちに考えが移っていました。 
馬鹿げてますが、某TV番組「なんとかリング」のドッキリなのかとも考えました。 
「Tさん、奥さん、分かってること全部話して下さい。私に何ができるか分かりませんが 
今の状態だとまったく理解することが出来ません」 
Tさん 
「そうですよね、すいません。この家は一昨年から建築が始まって去年の春に完成して 
去年の夏過ぎまでこんなことは何もなかったんです」

Tさん 
「それが、去年の夏か秋口くらいに庭でバーベキューしてそのゴミ、土に還る様な生ゴミを 
堆肥にしようと思って畑にする予定だった場所を耕した時からなんです」 
「さっきみたいなのが始まったんですか?」 
Tさん 
「はい、というか、最初はその畑の予定地を耕そうと掘り起こしたら、牡蠣殻が大量に出てきたんです。 
困ったと思いながら少し別の場所を掘り起こしたら小動物というか鳥の骨が出てきてしまって、
だったら最初の牡蠣殻の場所を深く掘ってそっちに移そうと深く掘ったら 
今度は中型の動物、まぁそうです豚です、豚の骨が大量に出て来たんです」 
「ここがさっきお話してた屠サツ場の亡骸埋葬地だったってことでしょうか?」 
Tさん 
「私も最初はそう思って役場に駆け込んだんです。でもそういう記録はないと一点張りで 
だから写真も撮ったりしてそれを持ち込んだんです。でやっと見るだけ見るってことになって、
だけど、あ、写真がこれです」 
「うわ・・・」 
大量の骨、しかも尋常じゃない程の骨、Tさんの言うとおり牡蠣殻も混じっていました。 
骨も大小、あと何となく新しいものと古いものが混じってるかの様な写真でした。 
「これは酷いですね、で対応してくれたんでしょ?」 
Tさん 
「それが・・・こうやって写真もあるからお坊さんには信じて欲しいんですが、こんなにあった骨が 
役場の担当者が来る日になったら綺麗に消えていたんです・・・」 
「え?」 
Tさん 
「え?って思うでしょ、でもなくなってたんです全部。だから役場は対応できないってことになって」 
「え?この証拠写真は?」 
Tさん 
「信じてもらえませんでした、実際役場の人間は見れなかったんですから・・・で、その数日後からなんです」 
「町ぐるみの嫌がらせとか、そういうのは?」 
Tさん 
「それも考えました、でも、さっきの音とガタガタ、お坊さんも見たでしょ?あれ、誰かが嫌がらせでやってる 
感じしましたか?」 
「・・・いえ、でも写真が」

Tさん 
「写真があっても駄目なんですよ。そのものがないと・・・で、役場の人間が来た次の日、やっぱりあるんです」 
「え?骨?」 
Tさん 
「はい、今日もあると思います、見ていただきたいんです、お願いします」 
私は携帯を持ってTさんと奥様と一緒に庭に向かいました。 
骨があるなら私の携帯で撮影しようと思ったからです。 
玄関で下履きを履いている最中にも「バン!」と音がしてどこかの窓がガタガタと揺れる音もしました。 
奥様 
「私達も馬鹿じゃないからこの音も録音したりしたんですよ、でも骨との関連はないと言われるし 
そもそもこれは何だって逆に聞かれて、こちらが困っているんです」 
慌ててムービー機能で録画しようとしましたが、既に現象はおさまっていました。 

で、三人で庭に出ました。入口から右周りに歩いていくと海の見渡せる景色の良い庭に出ました。 
敷地の一番端っぽいところに不似合いなブルーシートが広げられていました。 
もう僧侶という立場ではない感覚でした。 
何か不思議なことが起こっているらしいし、実際に音と振動は聞いて見た、それは間違いない。
ビビリの私なのにこのあまりにもハッキリした不可思議な現象の興味が強まる一方でした。

ブルーシートに近付くと周辺の芝生が少し枯れた色になっていました。雰囲気は十二分でした。
Tさんにブルーシートをめくって頂く前から念珠を握り口にしなかったですが経を唱えていました。 
ブルーシートがめくられると、Tさんの言うとおり、不快になる程大量の骨と牡蠣殻などがありました。 
Tさん 
「ほら、あるでしょ、この通り、お坊さん、見えるでしょ?これ、ここ、これ」 
ん?この嫌な光景を目にしながらまた不思議な違和感を覚えました。 
臭いがしない・・・ 
「Tさん、これだけ骨やらゴミ、というか色々なものがありながら臭いしませんよね?」 
Tさん 
「ずっと土に埋まっていたからじゃないですかね?それよりもお坊さん見えますよね?」 
「はい、見えますよ。私の携帯で写真撮って良いですか?」 
Tさん 
「はい、どうぞどうぞ、お願いします」 
ひょっとして撮影出来ないっていうよく聞くパターンか?と思いながら撮影ボタンを押すと 
カシャッ 
無事に撮影出来ました。 
「Tさん、ちょっと触っても良いですか?」 
Tさん 
「もちろんです、どうぞどうぞ」 
私は素手では流石に触る気がしなかったので、近くにあった小さなスコップで一番手前にあった
骨を触ってみました。コツン、感覚はありました。実在している物体でした。 
その後、他の骨を触ってみましたがやはり感覚はありました。 
その時、奥様が「あっ!」と小さく叫びました。 
声の方を見ると奥様が自宅の窓(後で確認したらキッチンの窓でした)、を指差して 
「あれ、あれ」と私に見るようにという仕草をしました。

Tさんの奥様が指をさされた先を見ると文字通り呆気にとられました。 
それを見たときには驚くことも声が出ることもなかったです。 
そこにはTさんのお宅の窓枠を両腕で握って振っているような動作をする 
灰色の作業服を着た男性がいました。 
この世のものではないというのは流れでも雰囲気でも充分理解出来ていたのですが、 
何というか、真昼間の大都市の上空に細部までハッキリ見えるUFO(私は信じてます)が 
現れたというような感じで、あまりにもハッキリ見えすぎて、驚いたり出来なかったんです。 
多分数秒だったと思いますが、フリーズしていたと思います。 
その私にTさんが 
「お坊さん、あれです、あのシャツの男、あれもなんです」 
と慌てながらでも小さな声で話されました。 
「え?シャツ?」 
私にはハッキリと灰色の作業服の男性が見えていますが、 
Tさんは「シャツの男」と仰いました。 
「Tさん、シャツの男ですか?」 
Tさん 
「え?お坊さん見えてないんですか?あれが」 
「いえ、男性は私にも見えているんです」 
Tさん 
「え?」 
「でもシャツじゃなくて灰色の作業服なんです」 
Tさん 
「え?汚れたTシャツじゃないですか・・・泥まみれの」

自宅を出てここまで約4時間、こんな短時間しかも立て続けに不可思議なことが起きて、 
加えて、これまでこんなに、恐らくこの世のものでないかたがハッキリ見えたことはありませんでした。 
作業服のしわまで、窓枠を掴んでいる腕の手の甲の汚れまでハッキリ見えていました。 
でもTさんは汚れたTシャツと言う・・・一気に色々なことが起き過ぎて頭が上手く働きませんでした。 
先に書いた通り、私達の教義では加持祈祷や呪(まじな)いの類は一切禁止されています。 
漫画の孔雀王みたいな退魔師みたいなことは勿論出来ません・・・ 
Tさんも、奥様もきっとそういうことを望まれているんだろうとは瞬時に感じました。 
どうしよう・・・と思ったときに独鈷杵を思い出しました。袖から慌てて取り出して、 
そのまま作業服の男性に念珠と一緒(本当は駄目なんですが)に向けて、名号を唱え、 
更に加えてご本尊の梵字の音読みを口にしてみました。 
(これは正しい作法ではありません、咄嗟にやってしまった滅茶苦茶な自己流です) 
どうかお浄土に・・・と必氏に願いました。

その間にシッカリと作業服の男性に目を向けました。 
白髪なのか乾いた泥なのか白髪交じりに見える頭部、やや日焼けしていると感じる腕と首周りなど 
今でも思い出せます。でも、顔がよく見えません。少し、半歩移動すれば普通なら横顔くらい見えそうな 
距離感、位置だったのですが、何故か顔がよく見えません。作業服のしわまで見えているのにです。 
何となく、ですが、もっと強く念じた方が良いんではないかと思い、ほんの少しだけ、目を閉じて 
それまで以上に強く名号を念じてみました。これもほんの数秒です。 
するとTさんの「きえた」という声が耳に入りました。奥様の「あぁ・・・」という声も聞こえました。 
目を開くと作業服の男性はいなくなっていました。 

前に突き出した両手を下ろすと、Tさんと奥様から次々に「ありがとうございます」と言って頂きました。 
何が上手く行ったのか全く分かりませんでしたが、とりあえず窓枠を掴む作業服の男性は 
その場からいなくなりました。 
その時、不謹慎ながら「あ、携帯で画像か映像を撮ればよかった」と思いました。 
Tさんと奥様にお聞きしましたが、やはり撮影などはされていませんでした。 
男性が掴んでいた窓枠に近付きました。ひょっとしたら掴んだ形跡が残っているかもと思ったからです。 
勿論、何もありませんでした。あんな泥だらけの腕で掴んだのに。 
ということは、矢張り実体のあるものではない、ということになります。 
そこからまた急に怖くなって来ました。どうすればキチンと対応出来るものか、必死で考えました。 

どうすれば良いかを考えている時にふと、ブルーシートの中が気になりました。 
作業服の男性が消えたってことは、もしかしたら、骨が消えているんじゃないか? 
それをTさんに伝えてシートをめくって頂きました・・・骨はありました。 
じゃあ、作業服の男性と関連はないのか?また分からなくなってしまいました。 

奥様にも促され、一旦リビングに戻ることにしました。その場で丁寧に合掌をして室内に戻りました。 
Tさんも奥様も先程の偶然を想像以上に勘違いされ、私の事を漫画の退魔師みたいな風に 
思っている期待感みたいなものがひしひしと伝わって来ました。 
私はそういう事が出来る僧侶ではないこと、先程のことは単なる偶然であることを正直に言いましたが、 
これまでのストレスもあったのでしょう、それでもさっき目の前で出来たから的な解釈をされた様でした。 
お茶を頂、改めて整理をしようと提案しました。 

まず、去年の夏か秋に骨がみつかり、それから不可思議な音や窓の揺れ、先程の男性が現れる様になった。 
しかも、骨は写真に写り、触れる実体物なのに役場の職員が来た時に限って消えていた。 
「他にはありますか?」 
Tさん 
「あの・・・誰もいない場所から人の声が聞こえることもあります」 
「どんな風に、何を言ってるかわかる感じでしょうか?」 
Tさん 
「あー、とか、うーん、とかそんな感じの男性の声だよなぁ」 
と奥様に同意を求めました。 
奥様 
「ハッキリした人の会話みたいなのは聞いたことないんですけど動物の泣き声とも違うんです。
主人の言うような人だって思えるような、人の声に聞こえる声なんです」 
「で、先程のお庭での件ですが、私には作業服を着ている様にみえたんです。 
様にというか、灰色の作業服がハッキリみえました」 
Tさん 
「私がこれまでみてきたのは、さっき言った通りいつも汚れたTシャツ着てます、なぁ」

奥様 
「そうですね、私も男の人は汚れたTシャツを着ている人です」 
何で見え方に違いがあるんだろう? 
そういえば、この部屋で最初に窓が揺れているのを見たとき、ガラスの向こうには何も見えなかった、 
これも何か矛盾してる・・・庭で見たあんな風な掴み方してたらこちらから丸見えのハズなのに・・・ 
しかし、まさか人が揺らしてる感じで揺れていたのが本当に揺らす様なことしてたとは・・・ 
「この土地って元々はどういう土地だったんですか?」 
Tさん 
「私も気になって調べたんですけど、記録が残っている分ではもともと耕作地で 
バブルの時期あたりに宅地に転用したみたいなんです。 
元の所有者に聞いても書類維持に必要で小屋みたいなものは建てた事はあるが、 
ウチみたいな本格的な建て屋は初めてとのことでした。 
何か因縁や怨念、事件があったとかは無い感じなんです。」 
「でもこの付近、他に人家が少ないですよね?」

Tさん 
「そこが気に入った部分でもあったんでこれまでは全く気にしてませんでした」 
「近所、っておかしいですが、近くに住んでる人達に何か聞いたりはしましたか?」 
何だか僧侶というかもう警察か探偵みたいな感じになってます。 
Tさん 
「ええ、変な噂が立つのは困るし、こういう田舎だし、私たちはいわゆるよそ者なんで 
遠まわしにしか聞けてませんが、聞きました。 
でも何かこういうことの原因になる様な話は今まで出てきたことはありません」 
奥様 
「もともと、何だかここの人達はあまり、親切ではない感じはしてましたけど、 
住んでこんな事が起きるまでは、綺麗な自然と風景をすごく気に入って気にならなかったんです。 
主人が言った通り、田舎に来たよそ者だから仕方ないけど、何か干渉してくるわけではないから
こちらからも積極的に交わる様なことはしてませんでしたし・・・ 
だから近くのお寺と神社から断られたと最初は思ってました」

「あの、では、私に見えた作業服の男性に何か覚えとか、何か心当たりみたいな・・・」 
Tさん 
「最初に車の中でお話した通りで、私たちには覚えの無い関係ない人間だと思います」 
「私、あの男性のお顔を拝見しようとして最後まで見えなかったんですが 
Tさん、奥さん、顔は見たことありますか?」 
Tさん 
「お坊さんも見えなかったですか、私たちも男の人というのは確実に分かるのに 
顔は一度も見えたことないんですよ・・・でも作業服ということも一度もないと思いますが」 
奥様 
「そうですね、いつもTシャツの姿なんですけど」 
お二人の会話に少々気になる箇所があることには気が付いていたのですが、 
今はそれよりも、一刻も早く何か対策をして、治められるものなら治めて、 
移設するなら移設を完了させて、早く帰宅したいと思っていました。 
そう考えて行くうちに、ふと嫌なことを思い付いてしまいました。 
ビビリのくせに、不思議な話、怖い話、UFO、UMAなどに興味がある私は、 
Tさんたちと私では、男性の服装が同じに見えないこと、でも、その顔はお互いハッキリ見えない・・・ 
もしかしたら、例のブルーシートの下の穴にある骨に人骨が含まれているのではないだろうか?
それで供養を望まれていて、それを伝えるために不可思議な現象を起こしているのではないだろうか? 
通常の供養みたいなことをすれば、ひょっとしたら全ておさまるのではないだろうか? 
という風に推理を展開しました。が、もし推理通り人骨があったとしたら、事件、 
警察沙汰になるなぁ、とも思いました。

その素人推理をお二人に話しました。 
Tさん 
「もし、お坊さんが仰る様に人骨が見付かったら、事件ですよね・・・」 
奥様 
「え?サツ人事件とか、そういうのですか?」 
「いや、そう決まったわけではなくて、サツ人とかは違うと思いますが、 
何かそういう弔われていないかたの意志みたいな現象に思えたので・・・」 
Tさん 
「あれだけ沢山骨があったら確かにわからんかもしれん」 
奥様 
「え?」 
Tさん 
「お坊さん、具体的にどうしたら良いですか?」 
「えーっと、私も確信ないですし、どうなるか正直分からないんですが、 
先ずは、ブルーシートの下から出来るだけ全部、掘り起こしてみませんか?」 
奥様 
「出てきたら、どうするんですか?本当に人の骨が・・・」 
Tさん 
「でも、そうしないと何もかわらないから、やるしかないかもしれん」 
私は法衣を着ていたので申し訳なかったのですが、直接お手伝い出来ませんでしたが、 
ブルーシートの下を掘り起こして、大きさ、種類別に出てくるものを分ける作業が始まりました。

その間すぐそばで合掌しながら経を唱え続けました。 
お二人は休むことなく1時間くらいは掘り続けたと思います。 
最終的には多分、畳4枚(4畳)分くらいのスペースにみっちりと敷き詰められました。 

不謹慎な言い方ですが、頭蓋骨が出て来てたら確定だったんですが、,その頭蓋骨らしきものが 
出て来なかったのと、人の生氏に関わる立場ながらお医者さんでもないので、どれが人骨なのか、 
そもそも人骨があるのかどうか、掘り起こした状態の骨ではさっぱり分かりませんでした。 
そこで、私がお二人に 
「正直この中に人骨があるかどうか分かりません、でも、これだけの骨が出てくるというのは矢張り 
普通ではないと思います。なので、この骨を全部まとめて今日これから弔って、 
例えば、敷地の端っこにでも丁寧に埋葬しなおして、気に掛けてあげたら如何でしょうか?」 
と提案しました。 
Tさん 
「まさか、ここまで出てくるとは思ってなかったし、不思議とこれだけのものが出てきても私、
ここから引っ越したくないというか、引っ越そうという気持ちにはなれないんです。 
勿論、引っ越すお金もないですし、なんか、これだけのものを見てしまったら、なんか 
可哀想になってきてしまって・・・牡蠣殻は別にしても動物の骨は仰る通りお弔いしないと 
いけない気がします」 
奥様 
「私も不思議なんですが、あれだけ嫌だった気持ちがなんか、主人と同じで急に可哀想な感じに
可哀想じゃなくて、哀れに思えて来ました」

先程までの嫌な空気が段々和んでいく方向に変わって行くのを感じていました。 
Tさんは、敷地の端、広葉樹(すいません名前がわかりません)のあるところの 
近くまで行って私に「ここで良いでしょうか?」と尋ねられました。 
「良いと思いますよ、その樹が墓標にもなるでしょうし」 
Tさんと奥様は、大きさ別に丁寧に骨を運び、その後一緒に牡蠣殻もすべて運ばれました。 
そして改めて、その樹の下を掘り始められました。 
私は何かほっとした感じになって、気を緩めていました。 
その時でした。穴を掘っているTさんが 
「あっ!」 
と大き目の声を上げました。 
「どうしました?」 
と私が近付こうとTさんに向かい始めた時、穴を掘って出る土を運んでいて 
私の後方にいた奥様が 
「あっ!」 
と大きな声をあげました。 
え?何?なにがおこったの?どちらの方向も見ましたが、咄嗟にどっちに動いたら良いのか分からず 
またフリーズ状態になってしまいました。 

「お坊さん、こっち、こっち」そう言いながらTさんが掘っていた穴(ご自分の下半身が隠れる位の深さ) 
から飛び出したのが見えたので、条件反射でそちらに向かいました。 
Tさん 
「お坊さん、穴、穴」 
Tさんが穴の中を指差します。が、何もありません。掘られた普通の空間があるだけでした。 
「どうしました?」 
Tさん 
「え?あれー?いない?さっき、あの男が私にむかって拝んでたんですよ、掘った中から、 
私の足元から私にむかって、拝んでたんですよ、突然出てきて、だから流石にびっくりして」 
「あ、奥さん!」 
私は慌てて奥様の方を振り返って奥様の状況を確認しました。 
奥様は私たちの上、樹の上の方に視線を向けていました。 
私は近付いて「奥さん大丈夫ですか?」と聞きました。 
奥様 
「はい、大丈夫です、大きな声だしてすいません、あの・・・さっきまであの樹の上に 
あの男の人がいて、それでビックリして声が出てしまって、主人を見てる感じで樹の上にいたんです。 
でも、お坊さんが近付いたら消えていって・・・お坊さん、見えましたか?」 
「いえ、私には今回は見えませんでした」 
奥様 
「あの・・・天国にいったんでしょうか?」 
「えーっと、天国というのは私たちの言葉ではないのですが、浄土ですね、 
極楽浄土って聞いたことないですか?まぁあれです、言葉はともかく、そうだったら良いですよね 
埋葬終わったら、改めて法要致しましょうか」 
そう言ってあらためて樹をみましたが、特段変わったものはありませんでした。

この様な場合への対応は元々私たちにはありませんので、自分なりにふさわしいと思う 
経を唱え、私なりのお弔いの形をとらせて頂きました。 
先日に余計に気をまわして用意した抹香(線香ではなんとなく場違いな気がしたので)を 
しかも上等(という表現は適切ではありませんが)白檀を焚き、お二人にも経本をお渡しし、 
同音でお浄土への成仏を、人間、動物、その穴に埋葬されたと思われる全てのものに対して 
祈らせて頂きました。 

まだ夕方にはなっておらず、この分だと明るい時間に帰宅できるなと思っていました。 
またリビングに戻り、一応、無駄かもしれないが、埋葬した骨に人骨が混ざっている可能性を 
役場に話した方が良いこと、勿論、不可思議な現象については無駄に話さないこと、 
もし、役場の人間が相手にしないならそれで良いし、何かあれば私にも連絡をしても構わない 
などを話していると、奥様がこう言いました。 
奥様 
「庭の件は、本当にお坊さんのお陰で助かりました、ありがとうございます」 
「いえ、こういうご縁も正直珍しいですが、お役に立てたなら幸いです」 
Tさん 
「本当にありがとうございます」 
「いえ、いえ」 
奥様 
「それでですね・・・最初に主人がお話した「お墓みたいなもの」のことなんですが・・・」 

・・・え?


「ちょっと、待って下さい・・・今、庭でおこなったことじゃなかったんですか?」 
Tさん 
「すいません、実はあれは1つなんです」 
「え?だって骨とか、あの男性とか」 
Tさん 
「ええ、でもお墓みたいなものじゃないですよね・・・骨捨て場みたいなところだったですが・・・」 
「え?じゃあ、別なんですか?」 
奥様 
「はい、申し訳ありません、お墓みたいなものは、2階にあるんです」 

ええええええええええええええええええええええええええええええ? 
はぁああああああああああああああああああああああああああああ? 
嘘でしょ? 
何だったの今までの出来事・・・充分不思議体験させて頂きましたし、 
ビビリで退魔師でもないけど、相当頑張りましたよ・・・私・・・ 
うわぁ・・・無事に家に戻れるかな・・・ 
そのままの心境が相当表情に出てたんだと思います。 
Tさんが土下座に近いポーズで 
「お願いします、さっきもお坊さんのお陰で救われたんです、だから大丈夫だと思うんです」 
と仰いました。 
「いや・・・流石にちょっと・・・あの・・・さっき言った通りあれもまぐれみたいなもんですから・・・」 
こんなこと現実としてあるんかいな・・・案外夢かもしれんなぁ・・・現実逃避みたいな思考になって来ました。

そういえば、庭の骨の話の時も1つって言ってたなぁ・・・ 
「あの・・・正直に仰って頂きたいんですが、さっきの骨とその2階のことと、あと他にも 
何か、あるんでしょうか?」 
Tさん 
「いえ、あとは、というか、本当にお願いしたかったのは2階の件で、後はそれだけです。 
お坊さんが来て先に、あの男のことが起きたんで、2階の話をしてる余裕がなかったんです 
本当にすいません」 
「でも、さっきの話だと、去年庭から骨が出てから色々起こり始めたって・・・」 
奥様 
「はい、そうです、2階のも、それからなんです・・・」 
「だったら、もうおさまってるかもしれませんよ」 
Tさん 
「はい、そうだったら良いと思ってはいるんですが、念のため一緒に2階に行っていただきたいんです」 
「ちょっと待って下さい、2階に関連して起きる症状というか、現象をまだお聞きしてないんですが」 
Tさん 
「あ、そうですね・・・」 
「というか・・・本当に失礼な発言だと思うんですが、そこまで色々あってよく引っ越しませんね。 
私一応僧侶ですが、相当怖いです。というか、本気で引越し考えた方が良くないですか?」 
Tさん 
「・・・。」 
奥様 
「すいません・・・」 
「あ、すいません、言い過ぎました・・・申し訳ありません」 
精神的にもだいぶヤラレテ来ているのが自分でも分かりました。何だか普段感じない苛々を感じていました。

「Tさん、実は車中でお聞きしてた件で気になった箇所があったんです」 
Tさん 
「はい、なんでしょうか?」 
「あの・・・お二人で住んでいらっしゃって、お子様はいらっしゃらない、近くに人家もない 
なのに、Tさんは、「周りに聞こえたら」と仰いましたよね、それは2階に関係あるんですね?」 
Tさん 
「・・・はい」 
「奥さん、奥さんとの会話にも、先程庭の件でお話してて気になった箇所があるんです」 
奥様 
「・・・はい」 
「Tシャツかどうかの話の時、男の人は、っておっしゃいました」 
奥様 
「・・・はい」 
「ということは、さっきの男性以外にもヒト的なものが他にいるってことですね、その2階に」
奥様 
「・・・はい、2階にだけ、ってことではなくなってきてるんですけど・・・主にそうです、すいません」 
うーん、本当にどうにかなるんかいな・・・そう思いながらもう片方では、何だか非常に 
腹立たしくなって来ていて、妙なやる気というか、勘違いな使命感みたいなものを感じていました。

「あの、2階で起きたこと、起きてること、お二人が困ってることを具体的に 
お聞きしたいんですが・・・」 
Tさん 
「はい・・・すいません・・・始まりはお話した庭のバーベキューのあと位からです。 
最初は、今はあの廊下のところの部屋で寝てるんですが、前は2階の海が見える 
部屋で寝ていたんです。すごく見晴らしも良くて・・・それがあの後から突然、 
人の気配とかじゃなくて、あのお墓みたいなものが部屋に出てきたんです。 
2階の寝てた部屋に突然浮かんでたんです」 
「浮かんでた?」 
Tさん 
「はい・・・やはり見て頂くのが一番良いと思うんですが、上手く言えないんですが、 
SF映画みたいにCGですかね、あんな感じで部屋にぼんやりお墓みたいなものが 
浮かんでいたんです、もう驚くしかなかったし、そこから音とか声みたいなものが 
聞こえてくるんです」 
奥様 
「音とか声とかじゃないんです、主人の言ってるモノから、人みたいなモノも出て 
来るんです、出てくるというか、こんな感じで(両手を突き出して)ぼやーっと 
出て浮かんで、たまに下に下りて来たりもするんです」 
Tさん 
「嘘じゃないんです」 
「ええ、ここまで来れば勿論少しも疑ったりしてませんから安心してください、 
で、どれくらいの大きさで、どんな形なんでしょうか?」

「出来たら紙か何かにかいていただけますか?」 
奥様が紙とペンを持ってきて下さり、Tさんが描いてくださいました。 
Tさん 
「こんな感じです、だよなぁ」 
奥様 
「はい、こんな感じで大きさは、どうでしょう・・・これくらい(両手で四角をつくりながら)です」 
紙には長方形と正方形が組み合わさった確かに墓石に見えるモノが描かれていました。 
大きさはだいたい30~40cm四方くらいな感じでしょうか・・・ 
「あと、これがあって起こる嫌な目というか、そういうのは・・・」 
Tさん 
「もう存在そのものです、そんなモノが四六時中部屋にあって、いや浮かんでて、 
そこから音とか声とか、人みたいのも出てくる、そういうの、とんでもなく嫌ですよ」 
「物理的にというか、体に感じる痛みとか苦しみとか、そういうのはないんですか?」 
Tさん 
「そう言われたら、そういうのは無いですが、ストレスが酷いです、精神的に苦しめられてますし」 
奥様 
「だから、もう半年近く2階には上がってないんです何しろ怖いんです」 
「わかりました、というか分かってないんですけど、2階に行ってみましょう、 
ただ、私に解決出来るかどうか、本当にわかりませんから、そこはご了承下さい 
それと、私以外に誰かにこの話しましたか?」 
Tさん 
「いえ、骨までは知ってる人はいますが、ここまで話したのはお坊さんがはじめてです」 
三人で2階に上がる階段へと向かいました。

こんな時だからでしょうか、何度も書きますが基本的にビビリなので 
嫌な事を思い出してしまいます。その階段の下についた途端、 
昔「ほんとうにあった」で観た階段の上からぼんやりとした白い洋服の女性が 
下りてくるが、いつまでたっても胸以上の部分が見えない、でも確実に下りて 
くる(胴体が異常に長い女)という映像を思い出しました。 
やっぱビビってんなー、自分で何かおかしくなってしまいました。 
「ではあがりますよ」Tさんが先頭に階段を登りはじめました。 
とにかく何かあれば庭でやった事を速攻でやろう、それだけは決めていました。

階段を登りつめるとTさんが 
「あ、かわっとる!」とおっしゃいました。 
「え?何がかわったんですか?」 
Tさん 
「前よりもハッキリみえるようになってます、おい」 
と奥様を呼ばれました。奥様も 
「ほんとうに、前はこんなにハッキリみえてなかったと思います。 
もっとぼやっとした感じだったのに・・・」 
私も二人の後からその部屋に入りました。 
すると、そこには先程描いて頂いた様な墓石の様な物体はなく 
蝶や蛾のサナギみたいな物体が、本当に浮かんでいました。 
「さっき描いて頂いた形と随分変化してますよね・・・」 
Tさんと奥様ほぼ同時に「え?」 
「え?」 
Tさん 
「いや、一緒でしょ?お坊さんお墓みたいなのに見えないですか?」 
「え?」 
何でこうなるの? 
「あの、私には蝶か蛾のサナギみたいなものに模様が入ってるモノにみえます」 
Tさん、奥さん 
「え?」 
庭の作業服の時と同じ現象でした。

多分、理由など考えても現状意味がないと思ったので、 
「ちょっと写真撮ってみますね」と言って携帯で撮影に挑みました。 
(書き忘れてましたが私はまだガラケー使ってます2014年製のモノです) 
これは流石に写らないかも、と思いましたが素直に、カシャっと撮影音がしました。 
その瞬間、サナギがブルブルと震えるような動作を始めました。 
Tさん 
「うわ」 
奥様 
「ぎゃっ」 
お二人にも先程とは違った状態になったのは見えていた様でした。 
早々に携帯をしまい、庭と同じ様に、念珠をもって合掌し両方の親指で 
独鈷杵を押さえながら名号を唱え、梵字の音読みを口にしました。 
すると、最初にこの家で体験した様な「バンッ」という大きな音と振動がして、 
それから急に物凄く臭い臭いが漂いはじめました。 
「臭い・・・」と思いながら唱えを続けているとTさんが 
「お坊さん、何かすごく臭い、物凄い嫌な臭いがしてきました」と仰いました。 
何か今私がやってることに、正しいか誤りか分からないけど反応はしてると 
確信しました。

「臭い」 
「くさい」 

Tさんも奥様もそう何度も口々に言いましたが、そこから逃げ出すようなことはしませんでした。 
その間も「バンッ」という大きな音と振動は続いています。 
私も何が正解か分からないので唱えを続けました。 
体感では5分位でしたが、実際はもっと短かったんでしょうが、矢張りその間長く感じました。
そして夢中になって繰り返していくうちに庭と同じく、目を閉じてご本尊を強くイメージして 
嫌なモノを祓うということでなく、成仏して頂くという気持ちを強くしました。 
見えてない閉じた目の中で、なんか空間が「グニャっ」いう感じで曲がった気がしました。 
「あ!消えた!お坊さん、消えましたよ!」Tさんが大きな声で仰いました。 
ほっとして目を開けると、Tさんと奥様が手を繋ぎながらピョンピョンと小さく跳ねていました。 
奥様が 
「あ、すごく良い匂いに変わってる・・・」 
Tさん 
「ほんとだ・・・すごい」 
多分・・・ですが、庭で焚いた白檀の香りでした。 
奥様が「いいかおり」と言いながらその部屋の窓を開け始めました。 
「せっかくのいいかおりなのにすいません、半年近く締めたままなので」 
「お坊さん、本当にありがとうございます、こんなに・・・すごいですね」 
とTさんが握手を求めてきました。 
「いや、本当にお話した通り、まぐれなんです、たまたま、なんです。 
だから勘違いしないで下さい、私が何か特別な技とか能力を持っている訳ではないんです」 
Tさん 
「でも、あの庭も、この部屋も、全部終わらせてくれて、私たちを助けてくれたのは間違いないです」 
「あの・・・多分、なんですが・・・「嫌なものを祓う」的なものは私たちの教義には基本無いんです、 
だから、庭でも、ここでも、私は浄土に行って欲しいと願ったんです。 
単純に、それが良かったのかもしれません・・・だからお二人も、一緒にそう願って頂けませんか?」 
そう言ってまた庭と同じ様なお弔いを行いました。

同門の大先輩の言葉に「怪は4種に体系化される、偽怪、誤怪、仮怪、と真怪である」 
というものがありますが、私には今ここで経験したことがどれに当てはまるのか、 
そんなことを考え始めてしまいました。どうせ説明がつかないんだから、とも思ったのですが、
何かスッキリもしない、小説やドラマ、映画などではないので、現実ってこういうものでしか 
ないんだろうとも思いましたが、何かスッキリしない気持ちに納得が行きませんでした。 

Tさんと奥様に散々お礼を言っていただき、良ければご馳走したいから泊まって行って欲しい 
とまで言って頂きましたが、明日の予定もあり、丁重にお断りして今日中に帰りたい旨を伝えました。 
随分と長い一日だったなぁ・・・というか本当にこれで終わったのかな? 
色々と思うところもありましたので、お二人に、正直にその事も告げて、帰路につきました。 
帰りもTさんご夫妻が送って下さったので、車中で色々話をしました。 
Tさん宅から出る頃にはまだ陽が残っており、周辺を再度、行きとは違った見方で眺めていました。 
暫くすると最初の人家、ある意味お隣さんのお宅が見えて来ました。 

「あっ・・・」と私は声を出してしまいました。 
「え?」Tさんが急ブレーキを踏み、車が停車しました。 
Tさん 
「お坊さん、どうされました?何かありましたか?」 
「あのお宅の屋根、見て下さい」 
奥様 
「きゃー!」 
その人家の屋根には物凄い数のカラスがとまって?溜まっていたのです。 
本当に初めて見るくらいの物凄い数でした。 
あまりの光景だったので携帯で撮影しましたが、窓ガラスをおろして撮影をしようとすると 
何故か大半のカラスが飛び立って行きました。音を立てたわけでもないのに。 
Tさん 
「あれ、何か関係あるんですかね?」 
「わかりません・・・でも飛んで行ったしTさんのお宅じゃないから大丈夫だと思いますよ」

そう言った瞬間、私は「わっ」と声を上げてしまいました。 
Tさんも、奥様も「どうしました!」と大きな声を出しました。 
「すいません、携帯が急に鳴った(サイレントバイブが急に反応した)んで驚いてしまって、l
すいません、本当にビビリなんです」 
Tさんも奥様も笑って下さいました。 
ただ場を和ませようとしたわけでなく、急にメールが届き始めたのです。 
「留守電着信」がどんどん届きます、同じく通常のメールも・・・ 
何でTさんのお宅で届かなかった?普通に不思議に思い 
「あの、Tさんのお宅の範囲って携帯圏外じゃないですよね?」 
とお聞きすると 
Tさん 
「え?そんな訳ないでしょ(笑)じゃあどうやって私がお坊さんに電話出来るんですか(笑)」
「ははは、そうですよね、すいません」 
留守電を車中で聞くのも何なので、メールを見ると家族からでした。 
だいたいの時間しか言って来なかったので、普通の仏事にしては時間が掛かりすぎていて 
しかも電話も繋がらないので、心配しての内容でした。 
某県の最果てに近い場所まで来てるので時間が掛かった、今帰ってます。 
と返信しました。余計な心配はさせたくないので不可思議な件は話すつもりはありませんでした。 
とにかく、細かなところで変なことが起きる日でした。 
無事に帰宅し、Tさんご夫妻はとても丁寧にお礼を何度も言って下さり帰られました。 
帰り際に「もしまた何かあれば連絡下さい」とは言いましたが何も起こって欲しくはありませんでした。 
その日は勿論ぐったりで風呂の中で寝てしまうくらいの疲れ具合でした。

さっき書き忘れましたが、帰宅後は、真っ先にご本尊に普段以上にお礼を伝えました。 
風呂あがり後は、夕食もとらずに寝てしまいました。 
翌日、疲れを引き摺りながらお勤めを果たしている中、どうしてもスッキリしないので、 
そもそもTさんご夫妻はどういう方達なのか、聞けてない話があってそれがあの起因になって 
たりしないか?Dさんに聞いてみることにしました。 
Dさんとは、もう3年以上お会いしてなかったんですが、そんな私を何故推薦したのかも 
直接聞いてみたかったのもありました。 
携帯番号にかけましたが、呼び出しはするけども電話口には出てくれません。 
数時間後にかけましたが同じ状態、翌日も同じ。流石におかしいなと思って、 
翌々日に電話して出てもらえなかったら、会社に電話しようと思いました。 
その日も何度か、トライしたら昼過ぎのタイミングの電話に反応がありました。 

「もしもし、Dさん?~~です、ご無沙汰してます」 
「はぁ?あの違いますよ」と女性の声での返答。 
「え?Dさんの携帯ではありませんか?」 
「いえ、違います」 
「大変失礼しました」掛け間違えたかな?再度掛けてみました。 
するとやっぱりさっきの女性・・・ん?何で? 
「私2年前からこの番号なんで前の方番号変えたんじゃないですか?」 
なるほど・・・そういうことか(笑) 
先日の件が影響して何でも不可思議な事に結びつける自分が恥ずかしくなりました。 
女性にお詫びを言って、Dさんから以前頂いた名刺を探しました。 
そして代表番号に電話をし、「~~と申しますがDさんをお願いします」と伝えると、 
「Dですか?あの、失礼ですがどちらの~~さまでしょうか?」 
と何か不信感を持った声で尋ねられました。

「あの数年前の~~でご一緒にお仕事させて頂いた~~なんですが・・・」 
「あぁ、あの時の」と声色が急に普通に戻りました。 
「私家内です、ご無沙汰しております」 
「あ、奥様でしたか、ご無沙汰しております。で、Dさんをお願いしたいのですが」 
「あの・・・申し訳ありません、Dは3年程前に亡くなったんですよ」 
「!」 
「もしもし?」 
「あ、すいません、お亡くなりになられたんですか?知らずに大変失礼しました申し訳ありません」 
「あ、いえ、お知らせ届いてなかったですかね?」 
Dさんは3年前に心不全で亡くなっていました。 
ぞっとしました。 
じゃあTさんはいつ私を推薦されたのか? 
何が何だかますます混乱しはじめました。 
なので、Tさんに電話し、いつDさんから私を紹介されたのかお聞きしようと思い 
すぐに電話しました。

「もしもしTさん、坊主です」 
Tさん 
「あ、先日は本当にありがとうございました。あれから家の空気がスッカリ変わって本当に助かりました。 
あれからおかしなことは一切おきてないです、それどころか、もう、あれなんですよ、匂いがね、 
お坊さんが焚いてくれた白檀の匂いが残ってる感じで、 
家の中が元通り明るくなって家内も物凄く感謝してるんですよ」 
「あ、それは、良かったですね、お役に立てて幸いです。でも他の人に私のことは言わないで下さいね。 
本当に解決する様な能力とかないので」 
Tさん 
「勿論、あの日もお約束しましたし、ウチだってそうそうこんなことあったなんて言えませんから 
安心して下さい、お約束は守りますし、お坊さんはウチを助けてくださったかたなんですよ感謝ばかりです」 
「あの、ちょっとお聞きしたいことがありまして、宜しいでしょうか?」 
Tさん 
「はい、なんでしょう?」 
「あの・・・Dさんからいつ私を紹介されたんでしょうか?」 
Tさん 
「・・・。」 
「もしもし」 
Tさん 
「はい」 
「あの、Dさんからいつ頃、どういう風に私の事をお聞きになったんでしょうか?」 
Tさん 
「お坊さん・・・」 
「はい」 
Tさん 
「もう全部解決したんですから、終わりにしましょうよ」 
「え?」 
Tさん 
「お坊さんはウチを助けて下さった。それで良いじゃないですか、もう終わりにしましょう」 
「え?・・・」 
Tさん 
「では、失礼します」

「あの・・・」 
電話は切られてしまいました。 

なんで?これ、なに? 

ますます混乱する中、この話を書き始めた6/14に外出から帰宅すると家族から 
「昼間、仏事のお尋ねの電話があったわよ、あなた指名で、Dさんからの紹介なんですって」 
と言われ、今日までその混乱が収まっていません。 
もう2日経ちましたが、そのお問合せの件に私はまだ電話出来ていません。 
家族からも早く連絡しないと失礼だから、と毎日言われていますが、怖くて出来ません。 

で、携帯で写した写真3枚、確かに保存されていたのですが、 
最後のカラスの屋根の家、以外の2枚は、真っ黒な状態にしかなっていませんでした。 
PCに移してフォトショップでコントラストあげてみたりもしましたが、 
真っ黒な状態から変化はありません。 
証拠がなにもないので、最初に書いた通り僧侶の立場もあり、身近な人間に話す事が出来ないんです。 
ここまで不思議で変な出来事に遭遇したのは初めてです。 
創作でないので、オチなどもないのですが、読んで頂いた皆さんで 
何か感想みたいなものを頂けたら幸いと思い、駄文ですが書いてみました。 
長々申し訳ありませんでした。 
読んでいただいたかた、ありがとうございました。 
何かご意見、頂けましたら幸いです。 


合掌

〇リゾートバイトのあらすじ

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『リゾートバイト』 はインターネットで古くから人気がある怖い話ではあるがかなり長い。
そのため、簡単にあらすじをまとめさせていただく。

大学3年の夏に3人は海のあるリゾート地で友人同士でもできるバイトをはじめる。
見事に海の近くの旅館に採用され、友人同士で楽しくリゾートバイトをしていくのだが、彼らの中の一人が封鎖されて入ってはいけないといわれている部屋に女将さんが料理を持ってく姿を何度も目撃していた。
それを全員に話したところ学生3名は好奇心から、こっそりとその部屋へ向かうのだがそこで見てはいけないものを目撃してしまうという物語。



リゾートバイトの全文を読みたい場合こちらへ>>

 

〇怖い話の名作リゾートバイトの解説

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インターネットで古くから人気がある怖い話『リゾートバイト』 
その始まりは 2009年8月4日から8月18日にかけて「ホラーテラー」という怖い話の投稿サイトに投稿されたのが始まりである。
そのホラーテラーというサイトは現在は封鎖されてしまって投稿されたページは見ることができないが、その怖さと面白さで現在でも人気が高い怖い話だ。ちょっとした短編小説として楽しめるほど完成度が高い。
元ネタの場所は不明だが、バイトの応募した3人はその方言から神奈川県の人間だといわれている。


町の外れに、ある夫婦が住んでいました。 
その夫婦には、まだ幼い子供がいました。 

ある日の事です。 
外で遊んでいた子供が、泣きながら家に帰ってきました。 
母親が心配して事情を聞くと、 
「お化けに追いかけられたの」と子供は言いました。 
母親は不審者に追いかけられたのではと思い、どんなお化けかを聞きました。 
しかし、子供は分からないと言うばかりです。
母親は何か見間違えたと思い、子供をあやしました。

それから何日か経った後、子供がいつものように外に遊びに行きました。 
しかし、いつになっても帰ってきません。
両親は子供を探しに行きましたが、見つけることはできませんでした。 
翌日、両親は警察に連絡し、子供の捜索をしましたが、結局手がかりは見つかりませんでした。 
両親は、もうこの世には居ないのものだと思い、深く悲しみました。 

そして、10年の月日が経ったある日の事です。
父親が仕事から戻ると、母親が落ち着きが無い様子で言いました。 
「あなた!!あの子が、あの子が帰ってきたの!!」 
父親が母親と一緒に子供の部屋に行くと、確かに居なくなった子供が居ました。 
母親はひどく喜びましたが、父親はおかしいなと思いました。 
なぜなら、生きていれば高校生ぐらいのはずなのに、子供の姿が10年前と全く変わっていなかったからです。 
父親はただ事ではないと思い、翌日、近所の寺の住職に事情を話し、家に来てもらうことにしました。 

母親が子供を住職のもとに連れてくると、住職はとても驚きました。 
両親が子供と言っていたものが、住職から見たら、影のように黒いモヤモヤしたものだったからです。 
そして住職は両親に言いました。
 
「あなたの子供は、残念ですがすでにこの世にはいません。そして、あの世にもいません」
 
両親は事態が飲み込めず、どういうことか住職に聞くと、 
「そこにいるのは、多数の死んだ人間の怨霊の塊です。子供さんの魂は、それに喰われてしまいました」 
住職は恐怖し、自分ではどうすることもできないことを両親に伝え、結局そのまま帰ってしまいました。 

その後、両親を見かけることはありませんでした。


友人のフリーライターから聞いた、怖いというかとても気味が悪い話です。

友人はフリーライターといっても、朝鮮の民俗学に興味があり、1年の半分以上は向こうにいます。
いつか北に拉致されないかヒヤヒヤしてるそうですww
何回かやめろよって言いましたが、やはりなぜかあの半島に魅力を感じてしまうらしいです。
まあ、普通に民俗学といえば聞こえがいいですが、彼が主に調べているのは朝鮮の黒歴史・・・
表には出ないドロドロした歴史だというんですから、物好きと言うか悪趣味と言うか・・・ 
映画にもなった、キム・デジュンの暗殺部隊なども調べたというものだから、困ったものです 

そんな彼が語った朝鮮の闇・・・
本当に闇に葬られた、現実にあったとは思えない、思いたくない、恐怖の歴史です。
あまりの話の内容に、彼はそればかりは文章にできなかったと言います。
この話は誰にも話しておらず、人に話すのは初めてだと言いました・・・
なぜ彼が私に話したのか、それは、いやがらせの為に話したのです。
というのも、彼と一緒に入った料理屋のバイトが朝鮮人で、あまりにも日本語が下手で、
思わず「これだからチョンは」と言ってしまったのをきっかけに口げんかになり、
そして落ち着いたところで、彼がポツリポツリと話し出しました。
「お前、朝鮮人がどれだけ歴史の裏で恐ろしいことをやっていたのか・・・教えてやるよ・・・」と。

今やかの国は発展途上ということもあり、
超高層ビルが建ち、ハイテクなパソコンが並び、様々な国と交流をもってますが、
実際にはそんなのは全体の一部に過ぎず、少し山奥や地方に行けば、未だに自給自足してる村もあります。
南北問題や朝鮮戦争なんて教科書に載っているような歴史ではなく、
本当に裏の歴史を知るには、そういった村からの情報が欠かせないと言います。

3年ほど前になるでしょうか、その日も彼は山奥の村で取材をしていました。
一通りの取材を終え村を出たころには、空はもう真っ暗だったそうです。
予定よりも時間をくってしまった。
さっきの村に宿を求めようかとも思ったのですが、結局、麓の町まで歩くことにしました。

しかし、険しい山道。
もちろん街灯なんかも無く、手元の懐中電灯の明かりも、ただデコボコの道と闇を照らすのみ・・・ 
おかしい。迷ってしまったんじゃないか。
そう気づいた時はもう遅く、森と闇に囲まれ、そして雷鳴が轟いたそうです。
振り出す滝のような雨。
彼は雨具を着て、「こりゃあ・・・雨宿りできる場所を探して野宿だな」と覚悟を決めました。 

ぬかるんだ地面に足を取られながらも、雨粒しか反射しない懐中電灯の明かりを頼りに、
一晩過ごせるような場所を探します。 
すると、地面から飛び出す巨大な岩と岩の間に、穴があるのを発見しました。ちょうど人ひとり入れるような穴です。
「坑道か何かか?ちょうどいい」
彼はその穴に入りました。中はもちろん真っ暗で、電灯で照らしても冷たい岩肌しか見えません。  
そのまま寝てしまえば良かったのですが、
彼は好奇心で「奥はどうなっているんだろう?」と、穴の深くへ進んでいきました。 

どれだけ歩いたでしょうか、深い深い穴の先、出口が見える気配もありません。
懐中電灯の電池も気になります。 
こんなことなら、入り口のところでさっさと寝てしまえばよかった。彼は後悔します。
ここで夜を明かしても、目覚めは闇の中でしょう。結局進むか戻るかしかありません。 

万一行き止まりだったら・・・そう思うとやはり後戻りかな、そう考えた矢先、雨音が聞こえます。
もしかして出口か?  
さらに先に進むと出口が見えました。
かなりの距離を歩いた気がする・・・
それは山の裏まで突き抜けているトンネルだったようです。
とりあえず出口が見つかったので、そこで彼は横になりました。

まぶしい光に、彼は目を細めながら起き上がりました。
昨夜の遭難に雨。そしてトンネルの事をぼんやり思い出しながら外に出ました。 
木々の隙間から漏れる光、快晴です。
よかった、とりあえず麓まで降りよう。
そして、少し先に開けた場所があるのを発見し進みました。 

森から抜け出し草原に出た彼は、その時の感覚を、
「あの時背中に走った悪寒はヤバかった。脊髄が氷柱に変わったかと思った・・・」そう語りました。 
彼が見たのは墓、墓、墓、墓墓、墓墓墓墓墓。
草原のあちこちに倒れ積み重なり、そして草からのぞく墓墓、墓石の大集団。
ほとんどの文字は苔に覆われ欠けていましたが、それは確かに墓だったといいます。
しかもその数は尋常じゃなかったそうです。 
草原かと思ったのは墓の隙間から生えた草で、その一面・・・
そう、彼が立っている地面そのものが墓石の山だったそうです。 
これほどの死者・・・疫病か?村同士の抗争か?
この山にも昔、村が点々とあったことはだけは知っているが・・・しかし考えづらい。
あまりにも多い。村1つ全員・・・どころじゃ・・・ない。
この山1つ・・・いや、この地方一帯の人間が死ななければ、これほどの数にならないんじゃないか・・・? 

恐る恐る墓石の文字を覗き込む。時代はどれも大体同じ時代のものが書かれていた。
ちょうど、日本で言えば幕末~明治初期に集中しているらしかった。 
そしてもう1つ、欠けた墓石の文字をたどっていくと・・・彼は気づいてしまった。
女性と・・・子供しかいない・・・
名前はほとんどが女性の名前。男性の名前もあったが、刻まれた年齢はどれも幼く・・・ソレを物語っていた。 
これだけの女と子供が?
この時代は確かに村と村、地域と地域、国と国の争いがあちこちであり、疫病も度々あった時代だ。
しかし、それなら成人男性の名前も刻まれるんじゃないのか?
男たちが出稼ぎや徴兵で出て行った後、残された女や子供が疫病で亡くなったのだろうか?
恐怖は徐々に好奇心に変わっていった。
ここで・・・ここいらの地域で何が起こったのか・・・彼は調べることにした。

まずは地域の資料を漁ってみた。図書館や役所にも足を運んだが、コレといった情報は得られなかった 
そもそも、今でも地方の山の奥で何があったかなんて、日本ですら分かってない事が多いのに、
管理能力がアレな国だ。
今現在でも、住民票すらない山奥の人なんて数万人もいるんだ。分からなくて当然なんだよな。彼は苦笑した。 

そこで、先日の村に再度話を聞きに行った。
その村の人は、確かにあのトンネルと墓の山の存在は知っていたのだが、 
比較的新しい村だったため情報は少なかったが、
「昔、かなり良くないことが起こったらしいが、詳細はわからない」
村一番の年寄りもこう語るのみだった。

あの時代、この地域の生き残り・・・は、さすがにいないだろうけど、
もしかしたら、どこか移住した部族がいるかもしれない。
様々な資料を調べ聞き込みを続けると、ある重要な手がかりを見つけた。
あの山一帯の者の一部は、今のロシアに移住しているとのこと。 
「ロ・・・ロシア?はぁ・・・お手上げじゃん」
私はため息をついたが、彼は薄気味悪い笑みを浮かべて続けた。
「いや、ロシアまで行ったぜ・・・さすがにロシア語わからなかったから、辞典片手にな」
アホだコイツ・・・私はすっかり冷めたヤキトリを頬張った。
「んで、ロシアで見つかったのかよ?墓場山の住民は」 
「あぁ、見つかった。俺ってハイパーラッキーだ・・・まあ、1年かかったけどな」 
「マジかよ・・・」
「ああ、しかも『絶対に話さない』と、超ガンコジジイでな。
 交渉に交渉重ねて、聞き出すのにさらに1年かかった」 
「・・・はぁアホだなぁ・・・」
私はため息をついた。

バカみたいに寒いロシアの田舎町に、その老人の家はあった。老人は、確かに朝鮮人の顔立ちをしていたという。 
ただ、生まれも育ちもロシアだというのだから、老人が語ったのは父の祖父・・・
つまり、ヒイヒイおじいちゃんの話だ。 
その老人も90代というのだから、確かに時代は合っているようである。 
老人はしわが垂れてわずかに開いた瞳で彼を見据えて、ゆっくりと話し出した。

わしらの先祖さんがこの国にやってきたのは、もう1世紀以上も前の話だ。
正直、この話はあの世まで持っていくべきことなんだよ。
お前さん、知ってどうする?
この世には知らなくてもいいことが山ほどある。
その山の頂点に位置するだろうこの話を聞くというのなら、お前さんは地獄に落ちてしまうだろう。
それでもいいのかい?
もしかしたら、ボケた老人の戯言かもしれんだよ?  
まぁ、いいさ・・・逆に知っておかなければならない話・・・かもしれん。 

そもそもこの話は、わしは父から聞き、父は祖父から聞いた話だ。つまり曽祖父にあたる。 
そうか、墓の山があったというのであれば・・・あの話は作り話ではなかったのだな。  
正直、お前さんに話すのは、何ももったいぶったワケではない。怖かったのだ。
ずっと作り話だと・・・父がわしを怖がらせようと作った話だと思っていた。
それが・・・まさか・・・そうか、本当にあったことだったとはなぁ。
わしは家族にも、誰にも話したことは無い。そもそもお前さんが現れるまでは忘れていたことだ。
今さらとんでもない者が現れたもんだ・・・やれやれ。

わしの父の祖父は、小さな村に住んでいた。 
貧しく苦しい生活だったらしいが、まあ当時としてはそれが普通だったんだろうよ。
そうだな、仮に父の祖父の名をキムとしよう。 

色々な人が集まり、様々な民族、人種が入り乱れる。
当時の人間からしてみれば、よその人種というだけで争い、殺しあう。
山は1つの部族の集まりだ、だから隣の山は敵だらけなんだ。
キムはそう教えられた。その村人全員がそう教えられて育つ。 
おそらく、他の山の集落でもそう教えていたはずだ。
だから、基本的には生まれた山で過ごし、暮らす。自給自足が当たり前。
だから、下手に下界と干渉しないんだ。 

キムはその日、畑を耕していた。いつものように畑で汗を流し、家族の元に帰る。
貧しく苦しいが、それでも幸せだった。 

「山が燃えているぞ!!」
突然の村人の叫び。キムが駆けつけると、遠くで山が燃えていた。
まずい、このままではあの山火事はここまで来る! 
キムたち村人は、総出で消化にかかった。
川の水を汲み、火にかけるが・・・自然の力は本当に強かった。
結局火は集落に流れ込み、村が山が灰になる・・・ 
その光景をただ見つめていた。

問題はそれからだ。早い発見で村人はほとんど逃げ出せた。隣の山の住民も逃げてきていた。 
そして、地域一帯で唯一無事だった山がある。
逃げ延びた人々は、その山の集落に助けを求めたが・・・それは、他民族の山だったんだ。 
殺されはしなかったが、扱いはあんまりだった。
男は毎日奴隷のように働かされ・・・女子供は・・・わかるだろ?まぁ、そういうことだ。

ただ、奴隷のように働かされるのは仕方が無い。
しかし、女性は妊娠しちゃうんだよ。
もちろんコンドームなんてないし、堕胎技術もない・・・産むしかない。
しかし怖いね。
「他民族の子を孕んだだと!」
怒りに狂った男は、妻や娘を殺し、腹を割き、胎児を取り出しぐちゃぐちゃにつぶした。 
それが1つの夫婦・親子じゃなかったから尚恐ろしい・・・

んで、その胎児と女が例の墓になったか?
違う。墓なんて立派なものじゃない。壷に溜め込んだんだ・・・
なぜ壷なのかわからない。ただ、殺した女子供は壷に流した。
(キムたちのいた山では、壷は邪悪なものを封じる魔よけのような物だったんじゃないだろうか?
 と友人は仮定してる)

女と子供は数えるほどしか残らず、女はいつ妊娠してしまうか震え、憎い憎いその他民族に抱かれる日々。 
そしてある日・・・他民族の子供が壷に近寄ってきた。
「これなあに?」と聞いてくる。 
「幸運の壷さ」とウソを教えると、子供はその壷を持って帰っていった。
ちなみに、ヤツらはこの壷の中身は知らなかった。
女が殺されているのは、日に日に減っていく数を見れば分かったが、
まさか壷に入れてるなんて思ってなかったんだろうな。 

その壷のつくりは何か特殊で、どうやら簡単に開けられないような仕組みらしい。
詳しい事は分からないが、そういう壷らしい。だからバレなかった。 

次の日から不思議な事が起こった。
他民族の家から叫び声が聞こえ、その家の子供が死んでしまったのだ。壷を持って帰った子だ。 
そしてその家の妻、隣の家の子と・・・次々に他民族の女子供が死んでいったらしい。
キムたちは「我ら部族の呪いがヤツらに降りかかったんだ」。 
そう思ったが、そういうわけではなかったんだ。
キムのまわりの女性や子供も死んだんだ。
・・・おかしい。やはり、実際に殺した我々も恨みの対象なのか・・・ 
しかし、よくよく考えると、女と子供ばかりが死ぬんだ。男性は無事なんだ。

そこで、わずかに生き残った女子供をつれて、村の大半がついに逃げ出した。 
奴隷に逃げられようと、他民族はそれどころじゃなかった。大切な跡取りが次々と死んでいく。
これは間違いなく、キムたちが何かをしているに違いない。と気づいた時には後の祭り。
キムたちはすでに逃げていたんだ。 

逃げ延びた先が、例の山さ。
そこで再び生活を始めたキムたちは、今回のこともあり、他の集落ともできるだけ仲良くするようになった。
苦しいときは助け合い、笑い合うようにする。
そして貧しいけど、またつつましい生活が始まった。

めでたしめでたし・・・とは、いかなかった。
例の他民族がやってきたんだ。
男だけになった彼らは、ニタニタ笑っていたそうだよ。
何せ分かったんだからね。呪いの正体。それは例の壷だったんだよ。
彼らは壷の中身を無理やり調べたんだろう。子孫を殺す呪いの壷。 
そして壷はパワーアップしてたんだ。
どうやら、壷の中身が多いほど・・・強いんだ。
だから彼らは、その壷で死んだ我が子、我が妻をたっぷり入れてね。 

あとはもうグダグダさ。呪い呪われ、死んで壷に流して。
その話が都のお偉いさんの耳に入り、役人が来たときには、すでに女と子供が消えていたんだ。
その村から山から地域から・・・ほとんどね。
男たちは都へ連れて行かれ処刑され、女と子供の怨念を恐れた都の人は、それぞれに墓を作った。 
そうなる前に、キムたち含むわずかな生き残りは、北へ北へと逃げていったそうだ。 

気味が悪い話だよ。飢饉で子供を食った話とか色々聞いてきたが、この話だけは何か・・・気分悪ぃぜ。 
しかし、壷はどうなったんだろうか。
ま、恐ろしいものだから、国に処分されたんだろう。

友人が「え?」と聞き返してきた。
私はもう一度聞いた。
「本当に壷なのか?」 
「う~ん、まあ壷だって言ってたと思うぜ」
「壷じゃなくて箱じゃないか?」
「え?なんでよ・・・別に壷だろうが箱だろうが、とりあえず入れ物だろ?」 
「だって、しってるよ・・・その壷・・・というか箱」 
「あ?マジかよ!!」
「うん。その壷(箱)の作り方知ってる部族の人、多分日本に来たことあるんじゃないかな?」 
「・・・え・・・」
「しかも、日本でソレ作ったんだよ」 
「・・・え・・・ウソだろ、なんでお前が知ってるんだよ!!」 
「うん、オカ板で一時期流行ったんだ」 
「・・・?何が?」 
「コトリバコ」 

私はすっかりぬるくなったビールを一気に飲み干した。


数年前、職場で体験した出来事です。

そのころ僕の職場はトラブルつづきで、大変に荒れた雰囲気でした。
普通では考えられない発注ミスや工場での人身事故があいつぎ、クレーム処理に追われていました。
朝出社して夜中に退社するまで、電話に向かって頭を下げつづける日々です。
当然僕だけでなく、他の同僚のストレスも溜まりまくっていました。 

その日も事務所のカギを閉めて廊下に出たときには、午前三時を回っていました。
O所長とN係長、二人の同僚と僕をあわせて五人です。
みな疲労で青ざめた顔をして、黙りこくっていました。
ところが、その日はさらに気を滅入らせるような出来事が待っていました。 
廊下のエレベーターのボタンをいくら押しても、エレベーターが上がってこないのです。
なんでも、その夜だけエレベーターのメンテナンスのために通電が止められたらしく、
ビル管理会社の手違いで、その通知がうちの事務所にだけ来ていなかったのでした。 
これには僕も含めて全員が切れました。ドアを叩く、蹴る、怒鳴り声をあげる。
まったく大人らしからぬ狼藉のあとでみんなさらに疲弊してしまい、同僚のSなど床に座りこむ始末でした。 

「しょうがない、非常階段から、下りよう」
O所長が、やがて意を決したように口を開きました。 
うちのビルは、基本的にエレベーター以外の移動手段がありません。
防災の目的でつくられた外付けの非常階段があるにはあるのですが、
浮浪者が侵入するのを防ぐため内部から厳重にカギがかけられ、滅多なことでは開けられることはありません。
僕もそのとき、はじめて階段に続く扉を開けることになったのです。

廊下のつきあたり、蛍光灯の明かりも届かない薄暗さの極まったあたりに、その扉はありました。
非常口を表す緑の明かりがぼうっと輝いています。 
オフィス街で働いたことのある方ならおわかりだと思いますが、
どんなに雑居ビルが密集して立っているような場所でも、表路地からは見えない『死角』のような空間があるものです。
ビルの壁と壁に囲まれた谷間のようなその場所は、
昼間でも薄暗く、街灯の明かりも届かず、鳩と鴉の寝床になっていました。 
うちの事務所はビルの7Fにあります。

気乗りしない気分で、僕がまず扉を開きました。 
重い扉が開いたとたん、なんともいえない異臭が鼻をつき、僕は思わず咳き込みました。
階段の手すりやスチールの踊り場が、まるで溶けた蝋のようなもので覆われていました。
そしてそこから凄まじくイヤな匂いが立ち上っているのです。 
「鳩の糞だよ、これ……」
N女史が泣きそうな声で言いました。
ビルの裏側は鳩の糞で覆い尽くされていました。
まともに鼻で呼吸をしていると肺がつぶされそうです。
もはや暗闇への恐怖も後回しで、僕はスチールの階段を下り始めました。 

すぐ数メートル向こうには隣のビルの壁がある、まさに『谷間』のような場所です。
足元が暗いのももちろんですが、手すりが腰のあたりまでの高さしかなく、ものすごく危ない。
足を踏み外したら、落ちるならまだしも、壁にはさまって宙吊りになるかもしれない……。 
振り返って同僚たちをみると、みんな一様に暗い顔をしていました。 
こんなついていないときに、微笑んでいられるヤツなんていないでしょう。
自分も同じ顔をしているのかと思うと、悲しくなりました。 

かん、かん、かん……
靴底が金属に当たる乾いた靴音を響かせながら、僕たちは階段を下り始めました。

僕が先頭になって階段を下りました。すぐ後ろにN女史、S、O所長、N係長の順番です。 
足元にまったく光がないだけに、ゆっくりした足取りになります。

みんな疲れきって言葉もないまま、六階の踊り場を過ぎたあたりでした。 
突然、背後から囁き声が聞こえたのです。 
唸り声とか、うめき声とか、そんなものではありません。 
よく映画館なんかで、隣の席の知り合いに話し掛けるときのような押し殺した小声で、ぼそぼそと誰かが喋っている。
そのときは後ろの誰か、所長と係長あたりが会話しているのかと思いました。
ですが、どうも様子が変なのです。
囁き声は一方的につづき、僕らが階段を下りている間もやむことがありません。
ところが、その囁きに対して誰も返事をする様子がないのです。
そして……その声に耳を傾けているうちに、僕はだんだん背筋が寒くなるような感じになりました。 
この声を僕は知っている。係長や所長やSの声ではない。
でも、それが誰の声か思い出せないのです。
その声の、まるで念仏をとなえているかのような一定のリズム。ぼそぼそとした陰気な中年男の声。
確かによく知っている相手のような気がする。 
でも……それは決して、夜の三時に暗い非常階段で会って楽しい人物でないことは確かです。
僕の心臓の鼓動はだんだん早くなってきました。 

一度だけ足を止めて後ろを振り返りました。 
すぐ後ろにいるN女史が、きょとんとした顔をしています。
そのすぐ後ろにS。所長と係長の姿は、暗闇にまぎれて見えません。

再び階段を下りはじめた僕は、知らないうちに足を速めていました。
何度か鳩の糞で足を滑らせ、あわてて手すりにしがみつくという危うい場面もありました。
が、とてもあの状況で、のんびり落ち着いていられるものではありません……。 

五階を過ぎ、四階を過ぎました。
そのあたりで……背後から、信じられない物音が聞こえてきたのです。 
笑い声。
さっきの人物の声ではありません。さっきまで一緒にいたN係長の声なのです。
超常現象とか、そういったものではありません。 
なのにその笑い声を聞いたとたん、まるでバケツで水をかぶったように、どっと背中に汗が吹き出るのを感じました。 
N係長は強面で鳴る人物です。
すごく弁がたつし、切れ者の営業マンでなる人物なのですが、
事務所ではいつもぶすっとしていて、笑った顔なんて見たことがありません。
その係長が笑っている。
それも……すごくニュアンスが伝えにくいのですが……子供が笑っているような無邪気な笑い声なのです。
その合間にさきほどの中年男が、ぼそぼそと語りかける声が聞こえました。
中年男の声はほそぼそとして、陰気で、とても楽しいことを喋っている雰囲気ではありません。
なのにそれに答える係長の声は、とても楽しそうなのです。

係長の笑い声と中年男の囁き声がそのとき不意に途切れ、僕は思わず足を止めました。 
笑いを含んだN係長の声が、暗闇の中で異様なほどはっきり聞こえました。 
「所長……」
「何?……さっきから、誰と話してるんだ?」 
所長の声が答えます。
その呑気な声に、僕は歯噛みしたいほど悔しい思いをしました。
所長は状況をわかっていない。答えてはいけない。振り返ってもいけない。強くそう思ったのです。 
所長とN係長は、なにごとかぼそぼそと話し合いはじめました。 
すぐ後ろで、N女史がいらだって手すりをカンカンと叩くのが、やけにはっきりと聞こえました。
彼女もいらだっているのでしょう。ですが、僕と同じような恐怖を感じている雰囲気はありませんでした。 

暫く僕らは階段の真ん中で立ち止まっていました。 
そして震えながらわずかな時間を過ごしたあと、僕は一番聞きたくない物音を耳にすることになったのです。
所長の笑い声。
なにか楽しくて楽しくて仕方のないものを必死でこらえている、子供のような華やいだ笑い声。 
「なぁ、Sくん……」 
所長の明るい声が響きます。 
「Nさんも、Tくんも、ちょっと……」 
Tくんというのは僕のことです。
背後でN女史が躊躇する気配がしました。
振り返ってはいけない。警告の言葉は乾いた喉の奥からどうしてもでてきません。 
振り返っちゃいけない、振り返っちゃいけない……
胸の中で繰り返しながら、僕はゆっくりと足を踏み出しました。
甲高く響く靴音をこれほど恨めしく思ったことはありません。
背後でN女史とSが何か相談しあっている気配があります。
もはやそちらに耳を傾ける余裕もなく、僕は階段を下りることに意識を集中しました。

僕の身体は隠しようがないほど震えていました。 
同僚たちの……そして得体の知れない中年男の囁く声は、背後に遠ざかっていきます。
四階を通り過ぎました……三階へ……足の進みは劇的に遅い。
もはや笑う膝を誤魔化しながら前へ進むことすらやっとです。 

三階を通り過ぎ、眼下に真っ暗な闇の底……地面の気配がありました。
ほっとした僕はさらに足を速めました。同僚たちを気遣う気持ちよりも恐怖の方が先でした。 
背後から近づいてくる気配に気づいたのはそのときでした。 
複数の足音が……四人、五人?……足早に階段を下りてくる。 
彼らは無口でした。何も言わず、僕の背中めがけて一直線に階段を下りてくる。 
僕は悲鳴をあげるのをこらえながら、あわてて階段を下りました。
階段のつきあたりには、鉄柵で囲われたゴミの持ち出し口があり、そこには簡単なナンバー鍵がかかっています。
気配はすぐ真後ろにありました。
振り返るのを必死でこらえながら、僕は暗闇の中、わずかな指先の気配を頼りに鍵を開けようとしました。

そのときです。 
背後で微かな空気を流れを感じました。 
すぅぅ……。 
何の音だろう?
必死で指先だけで鍵を開けようとしながら、僕は音の正体を頭の中で探りました。
とても背後を振り返る度胸はありませんでした。
空気が微かに流れる音。
呼吸。
背後で何人かの人間が、一斉に息を吸い込んだ。 
そして次の瞬間、僕のすぐ耳の後ろで、同僚たちが一斉に息を吐き出しました……思いっきり明るい声とともに!
「なぁ、T、こっち向けよ!いいもんあるから」 
「楽しいわよ、ね、Tくん、これがね……」 
「Tくん、Tくん、Tくん、Tくん……」 
「なぁ、悪いこといわんて、こっち向いてみ。楽しい」 
「ふふふ……ねぇ、これ、これ、ほら」 
悲鳴をこらえるのがやっとでした。 
声はどれもこれも、耳たぶの後ろ数センチのところから聞こえてきます。
なのに、誰も僕の身体には触ろうとしないのです!
ただ言葉だけで……圧倒的に明るい楽しそうな声だけで、必死で僕を振り向かせようとするのです。 


悲鳴が聞こえました。 
誰が叫んでいるのかとよく耳をすませば、僕が叫んでいるのです。
背後の声はだんだんと狂躁的になってきて、ほとんど意味のない笑い声だけです。 
そのとき掌に、がちゃんと何かが落ちてきました。 
重くて冷たいものでした。
鍵です。僕は知らないうちに鍵を開けていたのでした。 
うれしいよりも先に鳥肌の立つような気分でした。
やっと出られる。闇の中に手を伸ばし、鉄格子を押します。
ここをくぐれば、ほんの数メートル歩くだけで表の道に出られる……。 

一歩、足を踏み出したそのとき。 
背後の笑い声がぴたりと止まりました。 
そして……最初に聞こえた中年男の声が、低い、はっきり通る声で、ただ一声。 

「おい」


引用元: 死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?3


高校のときの話。当時の仲の良い友人が「週末、家に泊まらない?」って誘ってきたんだ。 
「親もいなしさ、酒でも飲もーぜ」って。
特に用事もなかったけど、俺は断った。
それでもしつこく誘ってくる。俺が「他をあたれよ」って言っても、なぜか俺だけを誘ってきた。 
あまりにもしつこいので、「なぁ、お前一人じゃ怖いのか?」ってからかってみたら、友人は急に黙り込んだな。
「なんだ、図星か?」って追い討ちをかけてみると、突然真面目な顔になって、「なぁ、お前、幽霊って信じるか?」なんて言ってきた。
俺はなんだこいつって思いながら、「まぁ、見たことは無いけど、いないとも言い切れないかな」って答えたんだ。 

 「じゃぁさ、週末に家に来いよ。幽霊はいるって解るよ」なんて言いやがる。 
「ふ~ん・・・・で、見に来いっての?でも止めとくよ」って言うと、
泣きそうな顔で「頼むよ、来てくれよ」って言うのよ。
「じゃぁ、具体的にどんな幽霊なんだ?」って聞くと、
「毎晩12時くらいに階段を1段ずつ昇ってきてる。そして週末にちょうど家の前に来るはずだ。
 その時、一人なのが怖いんだ」
って、本当に怖がりながら言うんだ。 
しつこいのもあるけど、ちょっと面白そうだなって気持ちがあって、「解った、行くよ」って言うと、
「ありがとう、ありがとう」って繰り返し言ってた。

そんなこんなで週末に友人宅(マンション)に訪れて、
他愛の無い話や、テレビを見たりゲームをしたりして遊んでた。
そして、23時半くらいになって幽霊の話を始めた。 
「なぁ、幽霊が階段を昇って来るってどういうことだ?」 
「一週間くらい前から、家の前の階段を昇って来る足音がするんだ。でも俺にしか聞こえてない。
 親に言っても、そんな音は聞こえないって言う」 
「んで、今日階段を昇りきるっていうの?」 
「ああ、階段を数えたから間違いない。確かに今日、家の前に来る」 
「通り過ぎるってことはないのか?まだ上もあるだろ?」 
「それも考えられる、だけど家に来るかもしれない。それが怖いんだ」 
「ふ~ん・・・」
などと話をしてると、友人が「おい、聞こえるだろ?足音」って言う。でも自分には何も聞こえない。 
「全然聞こえないよ」
「なんでだよ、聞こえるだろっ。ほら、また一段昇っただろ!?」 
「落ち着けって、何も聞こえないよ。気のせいだろう」 
「なんでだよ、なんで聞こえないんだよ!ほら、ほらっ!」 
「聞こえないって、落ち着けよ!」
イラつきながらなだめようとする。 
でも、もう友人はこっちの話を聞こうともしない・・・。 
「止まった!!今、扉の前にいる!!!」 
「じゃぁ、開けて見てこようか?」っていうと、激しく止めてきた。
「止めてくれ!開けないでくれ!!いるんだ!そこにいるんだ!!」 

「大丈夫だろ!何も無いじゃないか!」
こっちも語気を荒くしてなだめようとする。 
すると、急におとなしくなったかと思うと、友人はこう言った。
「・・・ダメだ、ずっとこっちを見てる。もう・・・逃げられないよ」 
「!?おい、何言ってるんだ!?何も無いだろう!?大丈夫だろ!?」 
友人の一言が、異常なほど恐怖心を駆り立てた。
「!!叩いてる!扉を叩いてるよ!!」って言ったかと思うと、
「うおおおおおおおお」だか「うわあああああああ」だか叫びながら、友人は扉に向かって走っていった。
あまりの突然のことに、俺は体が動かなかった。 

友人は叫びながら、扉を開けて外へ出て行った。
俺も慌てて追いかけたけど間に合わなかった・・・
友人は踊り場から身を投げていた。 
訳が解らなかった・・・何が起きたのか・・・

記憶に残ってるのは、その後の警察の取り調べからだった。 
何が起きたのか、どういう状況だったのか、自分の覚えてることを全て話した。 
意外なことに警察はあっさりしていた。もっと疑われると思ったからだ。 

意外なことはまだあった。警察官が呟いた一言だった。 
「またか・・・」 
またか?何だ?またかって!?不自然な言葉を疑問に思って聞いてみた。 
「またかって、どういうことですか?」 
「・・・あまりこういうことは言わないほうがいいかも知れないけど、君も関係者だし、知っていてもいいかもしれない」
と話してくれた。 
それは、友人のような自殺(変死?)が初めてではないこと、
同じ事が同じマンションの同じ部屋で何度か起こっていること、
原因が警察でも判らないことなど。

結局友人の死は、ノイローゼによる突発的な自殺ということになった。 
悲しみというより、驚き。何がなんだか解らないまま終わっていった。 
結局友人は、何を聞いて何に恐怖していたのか・・・。 

全て終わったと思ったとき、電話があった。死んだ友人の母親からだった。 
『夜分恐れ入ります。先日は、大変ご迷惑をおかけしました』
「あ、いえ、こちらこそ・・・」と言葉を探っていると、
『あのぅ変なことを聞くかもしれませんが・・・家の息子は、確か死にましたよね?』
「え?」 
何を言ってるんだろう。お通夜も告別式もやったじゃないか。 
まさか、息子を亡くしたショックでおかしくなってなってしまったのか・・・と思ってると、
『実は・・・今、誰かが扉を叩いてるんです・・・』
 

ほんのりと怖い話スレ その1

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