怖い話らぼ −怪談・都市伝説まとめ−

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タグ:怖い都市伝説

今から10年位前の話。オレは学生だった。 

アルバイト先の居酒屋で知り合った二つ上の女。Yとしとこうか。 
今はお前らと同じクズだけど、当時は普通の学生だった。
Yとは何となく気があって付き合い始めた。 
オレは地方から出てきてアパートに独り暮らしだったから、バイトが終わったら、週に1~2回くらいウチに遊びに来ていた。 
ウチでは一緒に酒を飲んだりしながら、取り留めのない話をよくしていたな。 
Yも地方から出てきて、妹と一緒に住んでいると言っていた。 

当時は普通の学生と言ったが、やっぱり当時もクズだったよ。 
Yが妊娠した。もちろん生めるわけないさ。2人で相談して堕ろしたよ。 
それから何となくぎくしゃくしちゃって、Yとは別れてしまった。 
結局付き合った期間は、9ヶ月くらいだったかな。 
Yはこのバイトが生活の基盤になっていたから、辞めるわけにはいかない。 
結局オレが辞めた。クズなりに罪悪感もあって、部屋も引っ越したし携帯も変えた。 
Yに関するものは全て消して、やり直すことにしたわけ。 
やっぱりYのことは好きだったしな。


895 :894 :2010/05/04(火) 10:26:28 ID:LqXpykQt0
それから5~6年経ってから突然、新しいアパートに女がやってきた。 
どこからどうやって調べたのか分からないが、その女はYの妹と名乗った。 
オレにしてみれば、これ以上気味が悪いことはない。 
アルバイト先の同僚達とは完全に縁を切っていたから、オレの新しい住所が分かる筈がないんだ。 
Yの妹は、Yが死んだと言った。 
病気か事故か自殺か分からない。オレは聞こうともしなかったし、Yの妹も言わなかった。
もちろん、死んだのはオレのせいなんて言わなかった。
当たり前だ。一応お互い納得して別れてるんだし、それに別れて何年経ってると言うんだ。 
Yの妹は「お願いだから一度墓参りに行って欲しい」と言い、オレに墓園の住所のメモを渡した。 
その場は分かったと言ったが、行くわけないよな。 
Yの妹には「墓参りには必ず行く。ただYのことは正直思い出となっていた。勘弁して欲しい」と、
暗にもうオレのところには来ないで欲しいとお願いした。 
もうオレにとっては過去のことだったし、それに仕事だってある。 
Yの妹には悪いが、正直気持ち悪かったからメモもすぐに捨てた。 
確かにYを好きだった時もあったが、その時はもう別の彼女もいたしな。 
念のためオレはまた引っ越したよ。万が一また来られたらイヤだからな。


896 :894 :2010/05/04(火) 10:28:58 ID:LqXpykQt0
その時付き合っていた彼女をAとさせてもらうが、Aは会社の同僚だった。Aは事務職でオレは営業。
オレは帰りが午後10時過ぎになるのは当たり前だった。 
会社が休みの前には、Aは時々メシを作りにウチに来て、泊まっていっていた。 

Yの妹が現れてから1年経ったか経たないかといった辺りの夏。 
フラフラになって帰ったら、Aがメシを用意して待っていた。 
風呂から上がって、テーブルでビールを飲みながらAを見たら、何かAがおかしいんだ。 
Aがダブって見えるんだよ。
オレは近視で眼鏡を掛けており、風呂上がりで眼鏡を外していたのと、疲れ目でダブって見えたのだと思った。 
でも何か違うんだ。Aとほとんど同じサイズの人間が、20~30㎝くらい近づいたり離れたりしてるんだ。 
ピンぼけ写真を見ている感じなんだよ。
あれれ?と思って眼鏡を掛けても見えるんだ。 
Aはその手の話がまるでダメなので、オマエに被さって女が見える、なんてとても言えない。
どうしてじっと見てるの、何か顔に付いてる?って顔をしてる。 
しかも、ダブっているのはAじゃない。全く知らない女の顔なんだ。
その時は電気が点いて明かりが煌々としてるから、怖くも何ともなかった。とにかく不思議だっただけ。 
午後10時まで仕事なんてブラック会社に比べれば大したことないだろう、と言われりゃそれまでだが、
オレにしてみたら、仕事のしすぎで幻覚が現れたと思ったよ。 
多分、それが見えたのは30秒間くらいだったと思う。 
じっとAを見ていた筈なのに、そのダブった女はいつの間にか消えていた。


本格的にそれが出てきたのは、更に半年くらい経ってからだった。 
泊まりに来ていたAとベッドで寝ていた時、深夜2時頃だったと思うが、正確な時間は分からない。酔ってもいたしな。
Aが突然オレを起こした。 
何だと思ってAを見たら、Aの頭が変なんだ。 
右側(オレから見たら左側)が大きいんだよ。
!?と思ってよくよく見たら、ゆっくりAの頭の右から又あの女が出てきたんだ。オレの目の前30㎝くらいにだ。
そして、その女はにやにやしながらオレを見た後、どうしたと思う?
ゆっくりAの頭を喰いだしたんだ。喰ってたとしかオレには見えなかった。 
もちろん実際に喰ってた訳じゃないから、Aの頭が食いちぎられてはいないんだけど、
目だけオレを見据えてAの頭を喰いながら、Aの頭に重なって沈んでいくんだ。 
うまく説明できないが想像してくれ。
女の頭だけ、Aの頭に潜ったり出たりしているんだ。 
女がAを喰う度に、Aが苦しそうに目を瞑るんだ。 
「なんかすごく頭が痛い」とAが言うのだが、オレは金縛り状態になっていた。 
女は最後にもの凄い笑顔をして、舌を出しながらAの中に入って消えた。 
この時に、この女がYの妹だと分かった、と言うか頭の中で理解した。 
1回しか会っていないし、まともに顔を見ていないから、
(と言うか、オレを訪ねてきた時には、まともにはYの妹の顔を正視できなかったから)
初めて出てきたときには分からなかったんだ。 
友人の一家はそろってオカルト好きで、家族でコックリさんをしたりするそうだ。 
その友人が言うには、コックリさんというのはそういう名の何かがいるのではなく、 
一番手近の霊が呼び出されて、答えてくれる仕組みなんだとか。
そんないい加減なことで質問に答えられるものなのか、と思ったが、
案の定、答えられない場合もあるとのこと。
以下、その例として友人が語ってくれた話。 

ある冬の日。
夕飯前に一家全員でコックリさんをしたのだが、
何を尋ねても『しらない』『わからない』、脈絡なく『おかあさん』の繰り返しで要領を得ない。 
試しに名前と歳を尋ねてみると、4歳の女の子であることが判明。(名前は忘れてしまった。ごめん) 
それ以外のことは何も判らず、とりあえずお帰り頂いたそうな。
ただ、すぐに帰ってくれたわけではなく、
小さい子がぐずるように『おかあさんどこ』『いっしょに』などの言葉を何度か示したという。 

その翌日の新聞に、小さくではあるが、
前日のコックリさんと同名の4歳女児が、交通事故で亡くなったという記事が出た。
友人宅からさほど遠くない交差点での事故で。
「そういえば、救急車だかパトカーだかの音が少し聞こえていたかも」とのこと。 

偶然かもしれないし、コックリさん自体信憑性がどうなのかわからないが、友人の話を信じるとして、
『いっしょに』はお母さんに対してだったのか、道連れ的な意味だったのか…とちょっと考えてしまった。


親父の実家は自宅から車で二時間弱くらいのところにある。 
農家なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、高校になってバイクに乗る 
ようになると、夏休みとか冬休みなんかにはよく一人で遊びに行ってた。 
じいちゃんとばあちゃんも「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。 
でも、最後に行ったのが高校三年にあがる直前だから、もう十年以上も行っていないことになる。 
決して「行かなかった」んじゃなくて「行けなかった」んだけど、その訳はこんなことだ。 

春休みに入ったばかりのこと、いい天気に誘われてじいちゃんの家にバイクで行った。
まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。そうしたら、 

「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ…」 

と変な音が聞こえてきた。機械的な音じゃなくて、人が発してるような感じがした。
それも濁音とも半濁音とも、どちらにも取れるような感じだった。 
何だろうと思っていると、庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。
生垣の上に置いてあったわけじゃない。
帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで 
来ると、一人女性が見えた。まあ、帽子はその女性が被っていたわけだ。 
女性は白っぽいワンピースを着ていた。 

でも生垣の高さは二メートルくらいある。その生垣から頭を出せるってどれだけ背の高い女なんだ… 
驚いていると、女はまた移動して視界から消えた。帽子も消えていた。 
また、いつのまにか「ぽぽぽ」という音も無くなっていた。 

そのときは、もともと背が高い女が超厚底のブーツを履いていたか、踵の高い靴を履いた背の高い男が女装したかくらいにしか思わなかった。 

その後、居間でお茶を飲みながら、じいちゃんとばあちゃんにさっきのことを話した。 
「さっき、大きな女を見たよ。男が女装してたのかなあ」 
と言っても「へぇ~」くらいしか言わなかったけど、 
「垣根より背が高かった。帽子を被っていて『ぽぽぽ』とか変な声出してたし」 
と言ったとたん、二人の動きが止ったんだよね。いや、本当にぴたりと止った。 

その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」 
と、じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。 
じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にある電話まで行き、どこかに電話をかけだした。
引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からなかった。 
ばあちゃんは心なしか震えているように見えた。 

じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると、 
「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」と言った。 
――何かとんでもなく悪いことをしてしまったんだろうか。 
と必死に考えたが、何も思い当たらない。あの女だって、自分から見に行った 
わけじゃなく、あちらから現れたわけだし。 

そして、「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」 
と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。 

ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると、 
「八尺様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何にも心配しなくていいから」 
と震えた声で言った。 
それからばあちゃんは、じいちゃんが戻って来るまでぽつりぽつりと話してくれた。 

この辺りには「八尺様」という厄介なものがいる。 
八尺様は大きな女の姿をしている。名前の通り八尺ほどの背丈があり、「ぼぼぼぼ」と男のような声で変な笑い方をする。 
人によって、喪服を着た若い女だったり、留袖の老婆だったり、野良着姿の年増だったりと見え方が違うが、女性で異常に背が高いことと頭に何か載せていること、それに気味悪い笑い声は共通している。 
昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。 
この地区(今は○市の一部であるが、昔は×村、今で言う「大字」にあたる区分)に地蔵によって封印されていて、よそへは行くことが無い。 
八尺様に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。 
最後に八尺様の被害が出たのは十五年ほど前。 

これは後から聞いたことではあるが、地蔵によって封印されているというのは、八尺様がよそへ移動できる道というのは理由は分からないが限られていて、その道の村境に地蔵を祀ったそうだ。
八尺様の移動を防ぐためだが、それは東西 
南北の境界に全部で四ヶ所あるらしい。 
もっとも、何でそんなものを留めておくことになったかというと、周辺の村と何らかの協定があったらしい。例えば水利権を優先するとか。 
八尺様の被害は数年から十数年に一度くらいなので、昔の人はそこそこ有利な協定を結べれば良しと思ったのだろうか。 

そんなことを聞いても、全然リアルに思えなかった。当然だよね。 
そのうち、じいちゃんが一人の老婆を連れて戻ってきた。 

「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」 
Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。 
それから、じいちゃんと一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。 
ばあちゃんはそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、トイレのドアを完全に閉めさせてくれなかった。 
ここにきてはじめて、「なんだかヤバイんじゃ…」と思うようになってきた。 

しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。 
そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、その上にお札が貼られており、四隅には盛塩が置かれていた。 
また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、その上に小さな仏像が乗っていた。 
あと、どこから持ってきたのか「おまる」が二つも用意されていた。これで用を済ませろってことか・・・ 

「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。俺もばあさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。
そうだな、明日朝の七時になるまでは絶対ここから出るな。七時になったらお前から出ろ。家には連絡しておく」 

と、じいちゃんが真顔で言うものだから、黙って頷く以外なかった。 
「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。何かおきたら仏様の前でお願いしなさい」 
とKさんにも言われた。 

テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛れない。 
部屋に閉じ込められるときにばあちゃんがくれたおにぎりやお菓子も食べる気が全くおこらず、放置したまま布団に包まってひたすらガクブルしていた。 

そんな状態でもいつのまにか眠っていたようで、目が覚めたときには、何だか忘れたが深夜番組が映っていて、自分の時計を見たら、午前一時すぎだった。 
(この頃は携帯を持ってなかった) 

なんか嫌な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえた。
小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような音だったと思う。 
風のせいでそんな音がでているのか、誰かが本当に叩いているのかは判断がつかなかったが、必死に風のせいだ、と思い込もうとした。 
落ち着こうとお茶を一口飲んだが、やっぱり怖くて、テレビの音を大きくして無理やりテレビを見ていた。 

そんなとき、じいちゃんの声が聞こえた。 
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」 
思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。 
また声がする。 
「どうした、こっちに来てもええぞ」 

じいちゃんの声に限りなく似ているけど、あれはじいちゃんの声じゃない。 
どうしてか分からんけど、そんな気がして、そしてそう思ったと同時に全身に鳥肌が立った。 
ふと、隅の盛り塩を見ると、それは上のほうが黒く変色していた。 

一目散に仏像の前に座ると、お札を握り締め「助けてください」と必死にお祈 
りをはじめた。 

そのとき、 

「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽ…」 

あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。 
そこまで背が高くないことは分かっていたが、アレが下から手を伸ばして窓ガラスを叩いている光景が浮かんで仕方が無かった。 
もうできることは、仏像に祈ることだけだった。 

とてつもなく長い一夜に感じたが、それでも朝は来るもので、つけっぱなしの 
テレビがいつの間にか朝のニュースをやっていた。画面隅に表示される時間は確か七時十三分となっていた。 
ガラスを叩く音も、あの声も気づかないうちに止んでいた。 
どうやら眠ってしまったか気を失ってしまったかしたらしい。 
盛り塩はさらに黒く変色していた。 

念のため、自分の時計を見たところはぼ同じ時刻だったので、恐る恐るドアを 
開けると、そこには心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。 
ばあちゃんが、よかった、よかったと涙を流してくれた。 

下に降りると、親父も来ていた。 
じいちゃんが外から顔を出して「早く車に乗れ」と促し、庭に出てみると、どこから持ってきたのか、ワンボックスのバンが一台あった。そして、庭に何人かの男たちがいた。 

ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、 
庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。全部で九人が乗り込んでおり、八方すべてを囲まれた形になった。 

「大変なことになったな。気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下を向いていろ。
俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。
いいと言うまで我慢して目を開けるなよ」 
右隣に座った五十歳くらいのオジさんがそう言った。 

そして、じいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、後に親父が運転する乗用車という車列で走り出した。
車列はかなりゆっくりとしたスピードで進んだ。おそらく二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。 

間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。 

「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」 

またあの声が聞こえてきた。 
Kさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ、下を向いていたが、なぜか薄目をあけて外を少しだけ見てしまった。 

目に入ったのは白っぽいワンピース。それが車に合わせ移動していた。 
あの大股で付いてきているのか。 
頭はウインドウの外にあって見えない。
しかし、車内を覗き込もうとしたのか、頭を下げる仕草を始めた。 

無意識に「ヒッ」と声を出す。 
「見るな」と隣が声を荒げる。 

慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握り締めた。 

コツ、コツ、コツ 
ガラスを叩く音が始まる。 

周りに乗っている人も短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。 
アレは見えなくても、声は聞こえなくても、音は聞こえてしまうようだ。 
Kさんの念仏に力が入る。 

やがて、声と音が途切れたと思ったとき、Kさんが「うまく抜けた」と声をあげた。 
それまで黙っていた周りを囲む男たちも「よかったなあ」と安堵の声を出した。 

やがて車は道の広い所で止り、親父の車に移された。 
親父とじいちゃんが他の男たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せてみろ」と近寄ってきた。 
無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。 
Kさんは「もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」と新しいお札をくれた。 

その後は親父と二人で自宅へ戻った。 
バイクは後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。 
親父も八尺様のことは知っていたようで、子供の頃、友達のひとりが魅入られて命を落としたということを話してくれた。 
魅入られたため、他の土地に移った人も知っているという。 

バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係がある人で、つまりは極々薄いながらも自分と血縁関係にある人たちだそうだ。 
前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も当然血のつながりはあるわけで、少しでも八尺様の目をごまかそうと、あのようなことをしたという。 
親父の兄弟(伯父)は一晩でこちらに来られなかったため、血縁は薄くてもすぐに集まる人に来てもらったようだ。 

それでも流石に七人もの男が今の今、というわけにはいかなく、また夜より昼のほうが安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。 
道中、最悪ならじいちゃんか親父が身代わりになる覚悟だったとか。 

そして、先に書いたようなことを説明され、もうあそこには行かないようにと念を押された。 

家に戻ってから、じいちゃんと電話で話したとき、あの夜に声をかけたかと聞 
いたが、そんなことはしていないと断言された。 
――やっぱりあれは… 
と思ったら、改めて背筋が寒くなった。 

八尺様の被害には成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いということ 
だ。まだ子供や若年の人間が極度の不安な状態にあるとき、身内の声であのよ 
うなことを言われれば、つい心を許してしまうのだろう。 

それから十年経って、あのことも忘れがちになったとき、洒落にならない後日談ができてしまった。 

「八尺様を封じている地蔵様が誰かに壊されてしまった。それもお前の家に通じる道のものがな」 

と、ばあちゃんから電話があった。 
(じいちゃんは二年前に亡くなっていて、当然ながら葬式にも行かせてもらえなかった。じいちゃんも起き上がれなくなってからは絶対来させるなと言っていたという) 

今となっては迷信だろうと自分に言い聞かせつつも、かなり心配な自分がいる。 

 
「ぽぽぽ…」という、あの声が聞こえてきたらと思うと… 

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